映画館で『ひゃくえむ』を観ました。
(2026年2月1日時点でNetflixでも視聴可能です)
上映時間
106分
オススメ度
星5点満点中:★★★
ストーリー
生まれつき足が速く、友達も居場所も当たり前のように手に入れてきたトガシと、つらい現実を忘れるためがむしゃらに走り続けていた転校生の小宮。トガシは小宮に速く走る方法を教え、放課後に2人で練習を重ねていく。打ち込めるものを見つけた小宮は貪欲に記録を追うようになり、いつしか2人は100メートル走を通じてライバルとも親友ともいえる関係となる。数年後、天才ランナーとして名を馳せたトガシは、勝ち続けなければならない恐怖におびえていた。そんな彼の前に、トップランナーのひとりとなった小宮が現れる。<映画.com>
感想
2026年の1月に映画館で観てはいたものの、なかなか感想記事が書けず、公開が2月になってしまいました。
お正月休みに用事の合間ちょっとだけ時間が出来たので暇をつぶそうと映画でも観ようとしてのですが、上映時間の都合上他に選べるものもなく、なんとなくでチケットを購入。本作の前提知識としては「100m走を舞台にしたアツい映画」というぐらいで、本当にこれ以外の知識は一切ありませんでした。
本作の評価を点数にすると55点。50点は超えているので楽しめはしたのですが、色々と難しい要素が絡んでいるなと感じました。
100m走×ロトスコープというアニメの魅力を活かせられない組み合わせ
さて本作は100m走という、あまりアニメ向きではない競技を取り扱っています。
100m走は
- ライバルと競り合う競技ではない
- 10秒程度で終わってしまう
- 競技自体に戦略があるわけではなく、ただ限界まで手足を振るだけ
と、なかなかにアニメとして盛り上がる要素を入れる余地が少ないのです。
更には本作の制作手法、ロトスコープが映画の地味さに拍車をかけてしまいます。
ロトスコープとは一度生身の役者さんに演技をしてもらって、それをトレースすることでアニメーションながらリアルな動きを実現することができるのです。
ただ『ひゃくえむ』におけるロトスコープ、元々が100m走という割とリアルな動きが描きやすい競技を取り上げつつ、そこでロトスコープを使ってしまうと「画面がひたすら地味」という印象しか受けないのです。
たとえば最近僕が観た『鬼滅の刃』や『チェーンソーマン』のようにすべてがアンリアルな世界の中でロトスコープを使ってリアルな動きを織り込むのであればその演出も際立ちますが、もともとリアルな世界観に更にリアルな動きを入れてしまうと、それはもう「実写でよくね?」となってしまうのです。
なんといいますか2010年前後の日本映画のような少し牧歌的な映画になっていまして、あの頃の三浦春馬、林遣都、池松壮亮が主演していたプチ青春映画のような趣があります。
前述の通り直近で鬼滅やチェーンソーマンのような「アニメーションのワンダー」に溢れた映画を観ていただけに、すべてが写実的な『ひゃくえむ』は少々物足りなさを感じてしまいました。
しかしたまにアニメ特有の突拍子もない演出もあったりして、そこにはドキッとさせられてしまいました。特に走っているときの選手の突拍子もない表情など、100m走がいかに過酷で独特の競技なのかが伝わってきました。
もっと「アニメ特有」の演出があれば僕の評価スコアも上がったでしょう。
才能はある種の呪いでもある
アニメーションの表現手法についてはともかく、「才能はある種の呪いでもある」と観客に突きつけるストーリー展開はズキッと来ました。
主人公・トガシは生まれながらに足が速く、小学六年生にして100m走で全国1位となります。彼は
「100mだけ誰よりも速ければ全部解決する」
と言います。
楽しいから走る、走ることで何かを達成したいわけではない。生まれながらにして足が速く、そんな足が速い自分を周りは称賛してくれた。足が速いことがすべての免罪符になっている。ある意味で惰性にてそのままプロのアスリートになったのです。
ただプロの世界はあまりにも厳しい。学生時代のタイムは加点方式ですが、プロの世界では減点方式。どれだけ苦しいトレーニングを積んでも伸びるタイムはわずか0.01秒の世界。そしてプロになってから伸びるタイムなどたかが知れています。
そうしているうちに企業からの契約も打ち切られます。学生時代はヒーローだった自分がプロになってからは一介のアスリート、一般人になってしまっている。そしてプロのアスリートという肩書を取り払ったとき、自分には一体何が残るのか?
少し足が速かったばかりに自分はこんな世界に来てしまって、こんなことなら足が速くなければよかったのではないか?
そうトガシは考えるわけです。
この展開が自分としてもなかなか胸を打ち、少しウルッとしてしまいました。
アニメならではのアツいセリフや展開
ロトスコープというアニメーションの技法はともかく、ストーリー展開はなかなかアツいものがありました。アニメならではのアツいセリフや展開がバンバン登場してそれはそれでかなり楽しめました。
先述の通り「100mだけ誰よりも速ければ全部解決する」というセリフもそうですし、ライバルとなる小宮の「僕でも一瞬なら栄光を掴める」。陸上界の絶対的エース財津の「浅く考えろ世の中舐めろ 保身に走るな勝っても攻めろ」。こんなセリフ実写では絶対に言えません。
展開としてもネタバレになるので詳しく言いませんが、とあるキャラクターが圧倒的不利な下馬評を見事に覆し大捲りをみせるシーンなど心躍ってしまいました。
本作は小学校編/高校編/社会人編と三幕構成なのですが、自分としては高校編が一番好きでしたね。一度は陸上を諦めつつも、ふとしたキッカケで弱小陸上部に入り、そこから廃部寸前の陸上部を立て直すところがとてもよかったです。
また音楽の使い方が非常に効果的で、特にタイトルの入り方が非常にかっこいい。ここ数年で観た映画の中で一番カッコいいタイトルの入り方だったかもしれません。
点数自体は55点と微妙な点数ではあるものの、映画自体はそこそこ楽しめました。
事前の情報をほとんど入れずに観るのもなかなか楽しい経験でしたしね。
その後Netflixでも何回か観てしまいました。
