劇場で『ターミネーター:ニューフェイト』を観ました。
上映時間
129分
オススメ度
星5点満点中:★★★
ストーリー
ある日、未来から来たターミネーター“REV-9”(ガブリエル・ルナ)が、メキシコシティの自動車工場で働いている21歳の女性ダニー(ナタリア・レイエス)と弟のミゲルに襲い掛かる。ダニーとミゲルは強化型兵士のグレース(マッケンジー・デイヴィス)に救われ、 何とか工場から脱出した。そして彼らをしつこく追跡するREV-9の前に、サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)が現れる。
<Yahoo!映画>
感想
※今回はネタバレ全開のため、映画を未見の方はご注意ください。
さて、本作『ターミネータ:ニューフェイト』は『ターミネーター2』の正統な続編・・・ といってもターミネーターシリーズは作られるごとに毎回「『ターミネーター2』の正統な続編」と謳われている気がしますが、今回は遂にリンダ・ハミルトンとジェームズ・キャメロンもスタッフとして戻ってきたこともあり、今まで作られてきた続編に比べればやっとシリーズらしさが出てきた気がします。
僕は『ターミネーター2』と『ランボー2』『ロッキー4』が自分の人生の中でのマイベストムービー(その時の気分によって1位は随時変わる)なのですが、やはり今回も『ターミネーター2』を初めて観た時のような興奮は得られませんでした。
今回この映画を見ていて僕が思ったことは以下の3点。
- カタルシスを得られないストーリー構成に難あり
- 女性キャストたちは決められたストーリーの中で最大限好演した
- ターミネーター2は何が面白かったのかが再確認できた
です。
今回はこの3点について深堀りしていきます。
カタルシスを得られないストーリー構成に難あり
まず第一に、シリーズのファンであれば誰もが落胆した冒頭の
実はスカイネット側は別のターミネーターを送り込んでいて、そいつが『2』の激闘のあとでサッサとジョンを殺してしまいましたとさ
という展開。
おいおい、前作であれだけ命からがら激闘を生き延び、世界の平和を守ったのに一気にちゃぶ台返しかよ!!
お前ら『エイリアン3』のデヴィッド・フィンチャーの失敗を学んでないのか。
※『エイリアン3』も冒頭で『2』の激闘を生き延びたメンバーが主人公リプリーを残して全員死ぬ(そのおかげでファンから猛烈な批判を浴びた)
正直僕はこの時点で「あぁ、この映画はそこまでファンを大切にしていないんだな」と思い、期待するのを止めたのですが、その後も更にこちらの期待を見事に悪い方向に裏切る展開が繰り広げられます。
サラ「私達がスカイネットを破壊したおかげで人間と機械の戦争は起きなくなったはずだけど、なんであんた未来から送り込まれてるの?」
グレース「人間が『リージョン』と呼ばれるAIを新たに開発したから、それでやっぱり人間と機械の間で戦争が起きたの」
ここでも2でやってきたこと全否定じゃねーか!!
このようにスカイネットを破壊したところで別のAIが登場して結局人類と機械との間で戦争が起きてしまうのであれば、この『ニュー・フェイト』の戦いに勝ったところで意味がなく、カタルシスが生まれないのです。
それよりも冒頭で「実は別のターミネーターが送り込まれていましたベロベロバー」とやってしまったからには「じゃあこの戦いが終わった後でも際限なくターミネーターって送り込まれるんじゃね?」と白けてしまうんですよね。
どうやっても戦争は止められない、だからこそ原題のタイトルには『ダーク・フェイト』と銘打たれているのですが、タイトルが小洒落ているからといってストーリーの欠陥を許せるかといえばそんなことはなく、結局最後までこの戦いにはノることができませんでした。
女性キャストたちは決められたストーリーの中で最大限好演した
アクション描写はともかく、構造上欠陥だらけのストーリーの中で女性キャストたちは近年稀に見る好演をしたと思います。
まず物語の鍵を握る女、ダニーを演じたナタリア・レイエスは、誰からも好感を持たれるような快活なラテン系女性で、『1』の時のサラ・コナーのように「平凡な日常の中で突如現れた殺人者に戸惑い逃げながらも、最後には立ち向かっていく強い女性」を見事に演じています。
そんなダニーを守るために未来から送り込まれた強化人間であるグレースを演じたマッケンジー・デイヴィスも、強さの中にどこか脆さを感じさせる繊細な女戦士という存在を見事に体現しています。
特にマッケンジー・デイヴィスの鍛え上げられた肉体も見事なもので、「よく映画用にここまで鍛え上げたもんだな」と感動してしまいました。またエンターテイメント映画にはお約束の「セクシーな女優の薄着」というのもしっかりと守られていて、本作ではほとんどがタンクトップ姿だったのも僕にとっては大きな加算ポイントです。
最後にこの映画を観た人間なら誰もが思うサラ・コナーことリンダ・ハミルトンのカッコよさ!
劇中で初めて登場したときは、出てきた瞬間にそのオーラだけで「これは只者じゃない!」と思わせる雰囲気がありました。そして僕の頭の中ではシュワルツェネッガーが出てきたわけでもないのに「デデンデンデデン」というテーマが鳴り響いてしまいました(笑)
リンダ・ハミルトンは本作のために相当なトレーニングを積んだようで、そのトレーニングの成果が劇中で遺憾なく発揮されています。初登場時にグレネードランチャーやロケットランチャーをぶっ放すのですが、反動でよろめくことも表情が変わることも一切なく「なんとカッコいいBBAなんだ!!」と感動してしまいました。
銃を撃った時によろめかないというのは男性の俳優でもなかなか難しいことで、今までの映画の中で女性キャストが銃を撃っていてサマになっていたことはほとんどありません。ただそれをリンダ・ハミルトンは御年63歳になってそこからトレーニングを積んで出来るようになっているわけですからその役者根性にはただただ尊敬するばかりです。
ターミネーター2は何が面白かったのかが再確認できた
本作を観ていて感じたのは「本当はこのシリーズは『1』で完結していて『2』自体も蛇足だったんだな」ということです。
本当であれば『2』の時にも「スカイネットが『1』から更にターミネーターを送り込めると言うなら、いくらでも続編が出来るじゃないか」と思って然るべきなのですが、『2』は『1』の時の敵が味方になるというストーリーや、T-1000という液体金属型ターミネーターというアイデア、そして今見ても一つも古さを感じさせない画作りのおかげで余計なことを考える暇がなかったんですよね。
そして『2』は今まで見たこともない視覚効果と同時に劇中のキャラクターたちが死闘を通じて「ジョンが純粋な一人の少年から大人へと成長し」「サラは今まで自分を苦しめてきた悪夢と決別し」「機械は人間の心を学習する」という、本当であればそれ一つだけで一本の映画を作れそうなテーマを見事に1つの作品に詰め込んでいるからこそあれだけの傑作になったのです。
以上が本作『ターミネーター:ニュー・フェイト』の感想でした。
本作は『ターミネーター2』という偉大な過去作の看板を外して一本の単体作品として観るとこれでもかとアクションが詰め込まれ退屈はしませんでした。
惜しまれるのはストーリーが構造的に破綻しているのがなぁ・・・。
本国では思ったよりヒットにならず赤字なようで、さすがにこれ以上シリーズが作られることはないかと思いますが、また続編ができたらブツブツ言いながらも観に行ってしまうような気がします。