僕も今いる会社で新人の枠を抜けそろそろ中堅どころになろうとしているわけですが、そうすると自然と「若手の育成をどうするか」という会議に巻き込まれたりします。
そんな会議に出席すると上層部の何人かには必ず
人に頼らず何でも自分でやるのが一番力がつくんだ
って言い出す人がいるのですが、僕ってそれはナンセンスだなぁと思うわけです。
やっぱりなんでも最初はキッチリ知識を詰め込んで教育するのが一番だと僕は考えています。
正直この手の意見を持つ人とは今まで何度も衝突をしてきて、僕の力不足ということもあって説得できた試しがないので表面的には「そうですよね! 自力でやるのが一番ですよね!!」なんて合わせているのですが、内面では全くそんなこと思ってなくて。
僕の中では「自力でやるのが大切!」という人と「今の彼氏の浮気がひどいんだけど、別れたほうがいいかなぁ」と相談してくる女の子は結局人の話を聞かないと自分の中でカテゴライズしてます。
「人の力に頼らず、自分で~」って言ってしまう人って突き詰めると自分が後輩や部下にあれこれ教えるのがめんどくさいだけで、別に深いことを考えているわけじゃないんですよね。
僕がどれだけ教育をキッチリやることのメリットを説いてもその人の中で「教育の効果 < 教育することのめんどくささ」なので、めんどくさいと思っている人を動かすのはとてつもなくエネルギーが必要になる。
それにこの手の話題が出るたびに僕は
「確かに自力でやって失敗から学ぶことも大切ですけど、自分が10時間かかった作業を『自力でやるのが大切!』と言って後輩にも10時間かけさせるって意味なくないですか? 自分が10時間かかった作業を後輩には5時間で出来るようにしてあげないと組織として拡大していかないですよ。それに「自力でやったほうが伸びる」というのを何か数字として証明できるのですか?」
という旨を極力柔らかく言うのですが、そこからまともな返事が返ってきたことはないし、むしろ相手が逆上することが多いので先程言ったとおり最近では「自力でやるのが大切!!」なんて言ったりしてます。あくまで表面上は。(現場サイドでは上の意向を無視してゴリゴリと教育してます)
第一「自力でやるのが大切」とかいうのであれば義務教育なんて意味がないですし、そんな事を言う会社のお偉方が自分たちのご子息を塾に入れず自宅で勉強させるかって言ったらそんなことないわけじゃないですか。
まして社会人になって最初の3年間ぐらいなんてひたすら会社のルールを覚えるほうが重要で、そんな大学を出たばかりのヒヨッ子にオリジナリティなんか出されたってしょうがないわけです。
僕も新卒の頃はしょっちゅう上司から「フォーマット(会社のルール)に沿って動け。お前のオリジナリティが会社が何年もかけて完成させたフォーマットを上回ることなんてない」と言われたのを覚えてます。だから自分の頭で考えるなんて一通り色んなルールが身に染み込んだ4年目ぐらいでいいと思うんですよね。
昨今弊社でも新卒の離職率の高さをなんとかしようという話も上がっていて、現状からなんの変化もしようとしない自力最強論を唱えたって状況は何も変わらないわけですよ。
例えば僕は今、弱小の家電メーカーでC言語を使ったソフト開発をしているわけですが、自力最強論の人は「C言語は所詮道具でしかなくて、それをどう使うかが一番ポイントなんだよ(だから研修でそこまでC言語は教えなくていい)」とかゴキゲンなことを言ったりするわけですが、「C言語が所詮何かを作るための道具でしかないからこそ、せめて道具の使い方はキッチリ教えようよ」というのが僕のスタンス。
まして新卒の頃なんか「何が分からないか分からない」ので、先輩や上司にどう質問していいか分からない。出来上がった成果物も到底高品質とは言えない。
「知らなきゃ出来ない」のに、それを教えてもらえないばっかりに「なんで俺はこんなことも出来ないんだ」と挫折する人間を僕は数多く見てきました。
だいたい弱小とはいえそれなりの専門性のある家電メーカーに入社した時点で入社して1年以内に辞めてしまうって、結構問題だと思うんですよ。
僕は上司に恵まれて、今の上司が(聞けば)ほんとうによく教えてくれる方なので、「へー、世の中のあの家電って内部はこんなふうになってたんだ!!」と感心する毎日で非常に楽しい日々を送っているのですが、それを感じられないのはもったいない。
一通り自分で仕事が回せるようになって、それでも楽しさを感じられないのであれば辞めるべきだとは思いますが、そうなる前に辞めるのはなんとも残念で仕方ありません。
「自力でやるのが大切」というのは、いわば「10人の中から1人だけ100点を取れるやつを選出する」方法なんですよ。
かたや僕が考える「キャリアの初期はキッチリ教育しよう」というのは「10人全員に最低でも10点は取れるようにしてトータルで100点を超えるようにしよう」というものです。
確かに現状は自力で10点しか取れないかもしれない。けれど中には100点を取るポテンシャルを秘めている者がいるかもしれない。それを早々に切り捨ててしまうというのは会社にとっても大きな損失だと思うのです。
と、ここまで自力最強論の人を批判してきましたが、そんな彼らを動かすことが出来ないのはやはり僕も教育最強論が数字として結果を出せてないからなんですよね。
なのでそんな彼らを動かすことが出来るよう、これからも後進の教育には力を入れていきたいと思います。