昨今業務のデジタル化によりIT人材が求められ、非エンジニア職の社員にもITパスポートなどの情報系の資格取得を推奨する企業も増えてきました。
そんな中かねてから議論されているのが「ITパスポート/基本情報/応用情報は取得しても意味がない」ということです。
こちらは長らく議論されているものの、未だ結論は出ていない状態です。今回は文系出身からエンジニアになり、基本情報/応用情報を取得した自分がこちらのテーマに対して意見を述べたいと思います。
この記事の筆者
一般入試でも科目選択によっては英語を受験しなくても入学できるFラン大学出身。
20代後半に未経験からエンジニアに転身し、紆余曲折あり現在は大手企業にて勤務。
そもそも、大半の資格は取得をしても意味がない
いきなり結論を書いてしまうと、ITパスポート/基本情報/応用情報の資格を取得してもかけた時間に対するリターンとしてのコスパはあまり良くないと言えます。というのも、そもそも大半の資格は取得をしても意味がないからです。
資格試験というのは弁護士資格や医師免許のように「取らないとその商売ができない」ものでない限りは取ったからと言って即時何かしらの効力を発揮するものではありません。
ですので、「ITパスポートは取得したほうがいいか?」と漠然と聞かれれば、それは「意味がない」という回答にしかなりえません。「その知識がないと商売の許可が降りない」系資格以外は、覚えた知識が実務でそのまま出てくることはまずありえないため、どうやってもコストパフォーマンスが悪くなってしまうのです。
今回の情報系資格はもとより資格を取得して意味があるかないか論争についてはこのあたりの論点が整理されていないのでお互いで意見が食い違ってしまうのではないかなと思っています。
資格はどういうときに役に立つか
資格を取得するのであれば、必ず自分の中で「何のためにこの資格を取得をしたいのか」という目的をハッキリとさせてください。
例えばITパスポート/基本情報/応用情報であれば
- ITに関する最低限の知識があると証明できる
- ITに関する知識を効率よく学べる
というところが学習の目的になってくるでしょう。
ITに関する最低限の知識があると証明できる
例えば非理系の人が新たにIT業界に飛び込みたい思った時に、資格も何も持っていない人間と最低限ITパスポートは持っている人間、企業としてはどちらを採りたいでしょうか。僕なら少なくともITパスポートを持っている方を採りたいと思います。
中には「資格よりも自分でプログラミングをやった経験のほうが大事なんだ!」と言う人もいますが、自己申告のプログラミング経験なんて実際のところどれだけ勉強してるいるか、そしてどれだけのスキルが身についているかなどたかだか数時間の面接の中では見抜きようがありません。実際に電子工作を行ったり自分でWebページを作ってみて面接の場に持ってきてみても、それが「ちゃんと自分で作ったもの」か「誰かに言われてコピペで作ったもの」かなどなかなか見抜けないのです。
その点資格試験は第三者が監督して公正にジャッジしてくれるので、ITパスポートを取っているのであれば少なくとも数百時間は勉強するだけの勉強習慣は身についていることがわかりますし、最低限のIT知識があることを証明できます。
自分が採用する側に立って考えてみてほしいのですが、今から1ヶ月でとりあえず100人ほど未経験のIT人材を採用しなくてはいけなくなった時に、何を最初にふるいにかけるかと言うとやっぱり資格の有無でしょう。短期間でひとりひとり面接などしていられないときは、何かしらのスクリーニングが発生しますし、下手な実技能力よりかは資格のようなカタログ要素のほうがそういった網目に引っかかりやすくなるのです。
ITに関する知識を効率よく学べる
結局のところITを学ぶのにあたってITパスポート/基本情報/応用情報はこれ以上無い教材かなと思います。
TCP/IPって何? DisplayPortって何? パリティビットって何? とITに携わるうえで確実に触れることにはなるものの、積極的には自分から勉強しにいかないようなことを広く浅く効率的に学ぶことが出来ます。
特にネットワークやセキュリティの部分は非IT系の職場であっても触れないことは無いでしょう。企業におけるネットワークなど特定の部署しか触らないのでなかなか知識が身につきませんが、ITパスポートを勉強していれば最低限の知識は身につきますし、なにか起きたときにも情シスなどに素早くエラー内容を伝えることができるでしょう。
基本情報や応用情報となると午後問題は実技的な内容になってくるので、そこで設計書の書き方や状態遷移の考え方など、実際に現場でも役に立つような知識に触れることが出来ます。自分もエンジニアになってから歴もそこそこ長くなってきましたが、応用情報を勉強しているときは「こうやってシステムの構成を考えればよいのか」と感心する場面が多くありました。
心無い外野の声と反論
情報処理技術者試験は間口が広いため受験者層が多様で、それゆえ外野から心無い声が多く届きます。今回はその例と、それを気にしなくても良い理由を書いていきたいと思います。みなさんも周りの雑音に惑わされることなく勉強を続けましょう!
情報処理試験なんかエンジニアを数年やっていればノー勉でも受かる
エンジニアをやっていればノー勉でも受かるということは、試験の内容が普段の業務でも普通に出てくるということなので、やはり勉強しておいたほうが良いという証明にほかなりません。
情報処理試験なんか簡単すぎて、朝起きて会場にちゃんと行けることを証明する資格にしかならない
4万人が受けて1万人しか受からない合格率25%の試験が「簡単すぎる」ということはないでしょう。
何百時間も勉強しないと受からないのであれば適正がないのでそもそもエンジニアを辞めたほうがいい
応用情報まで行くと未経験からであれば500時間はかかると言われているので、そもそも何百時間も勉強するのが当たり前かと。それに辞めたところで他にどんな仕事をやればいいんでしょうかね。これが例えば芸能界やスポーツのように一握りの人間しか成功せず、失敗したときのリターンがあまりにも少ない場合は「適正がないから辞めとけ」というのは分かるのですが、情報処理試験はそういう類にものではないですからね。
必死になって努力して、頑張って取る資格って意味があるんだろうか…
司法試験や医師国家試験に挑戦してる人を見たら卒倒しちゃうんじゃないか、この人。ましてや勉強する内容と稼ぐということが全く直結してない大学受験(=学歴)はどう捉えてるんでしょうね。学歴なんかそれこそ実務ができることを証明しない資格の最たるものだと思うのですが、それでも多くの企業が高学歴な人間を取りたがるのは、難関大学に合格した(資格を取得した)ことがコツコツと努力したことや一定の学力があることの証明になり、ひいては社会でも活躍できることのシグナルになってるわけじゃないですか。やはり資格は取って損はありません。
どのような人が取得すべきか
取るかどうか迷う人は、すべからくみんな取ったほうがいいんじゃないかなと思います。
「俺は舌ベロ一本で自分のスキルを語り尽くしてやるぜ!」と自信を持っている方は不要でしょう。しかし僕のように隙あらば転職して年収を上げていきたいと考えていて、カタログ的に自分の職務経歴書を充実させたいという人は勉強すべきかなぁと思います。
特に僕の場合はFラン私立文系大学出身のため、口頭だけで実務経験を説明したところで裏打ちされたものがないので、自分のスキル感を証明するために応用情報を取得しました。
以下にポジションと勉強すべきIT資格の目安を記載します。
- これからIT業界に挑戦しようとする人:ITパスポートor基本情報
- IT業界3年以内:基本情報
- IT業界6年以内:応用情報
以上が「ITパスポート/基本情報/応用情報は取得しても無意味か」の考察となります。
僕自身が文系出身でドサクサ紛れにエンジニアになった人間なのでよく分かりますが、ITの勉強って教材があるようでないのでなかなか家に帰ってから勉強できないんですよね。
その点ITパスポートなどは効率よく勉強できる数少ない教材なのでやらない手はないかと思います。またこれらを勉強しておくと現場で知らない用語が出てきても「応用情報まで勉強してても分からないんだから、そりゃしょうがないじゃん」と思えるようになり、心の安定にもつながります。
IT人材としての市場価値を高めたり、自身をつけるのにはとてもよい資格だと思いますので、悩まれている方はぜひ取得をオススメします。
★2024/07/10追記
昨日弊社の部長と話す機会があったのですが、その際に「情報処理試験の取得有無でエンジニア採用にはどう影響が出ますか?」と聞きました。その回答を以下にまとめます。
もしここに高卒の子がいた場合
- ITパスポートを持っている:やる気を加味して面接は通すかも
- 基本情報を持ってる:専門学校卒相当
- 応用情報を持ってる:理系学部卒相当
- 高度情報処理資格を持ってる:理系院卒相当
として扱うぐらいの温度感になるとのことでした。