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書籍

曖昧な社会システムの徹底的言語化『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』

 『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』を読みました。

syakkindama

 

完了時間

 2時間程度

 

ページ数

 272P

 

オススメ度

 星5点満点中:★★★★

 

概要

 自分は「大人の発達障害」なのでは、と悩む人が多いなか、その解決策を具体的に示した本は少ない―。そんな悩みを抱えていた著者が、試行錯誤の末に身につけたライフハックを詰め込んだのが本書です。「普通」には生きられなくても、食べていくことはできるし、生きていくこともできる。仕事や人間関係がうまくいかない全ての人のための「日本一意識が低い」自己啓発書。<Amazon.com>

 

感想

 著者の借金玉さんは2017年からはてなブログで記事を書いており、その記事が書くたび書くたびはてなブックマークで人気になるため、僕もその存在はよく知っていました。

 

 現在は営業マンとして会社員生活を送るものの、かつては起業からの倒産を経験しており、その時の経験から書かれたリアルな会社経営のお話は大変面白く、毎回食い入るように記事を読んでいました。
 同時に借金玉さんは発達障害を持っており、それを克服するためのライフハックについても数多く記事を書かれているのですが、どれも具体的かつ実践的で非常に役に立つものばかりなため大変感心をしておりました。

 そんな借金玉さんが本を出版されたということで、前々から読みたいなとは思っていたのですがなかなかタイミングがなく、最近になってkindle Unlimited化されたため、これは良い機会だということで読むに至りました。

 

曖昧な社会のシステムを徹底的に言語化する

 まずこの借金玉さんの本を読んで感心したことは、普段僕らがなんとなくモヤモヤしつつも黙って受け入れている社会の少し歪んだシステムを徹底的に言語化しているところです。

 

 例えばどこの会社にでもいる「自分に話を通さなかったら怒り出す上司」について。

 ちょっと顔を立て損ねると不機嫌になる上司。自分を飛ばして話が進んだらぷりぷり怒り出す人。当時は意味不明だと思っていましたが、今は分かります。あれは「自分に支払われるべき対価が支払われなかった」という怒りなのでしょう。

 

 借金玉さんはこの世には「見える通貨」と「見えない通貨」があると説きます。

 見える通貨の方はまさにドルや日本円など、文字通りの通貨となります。一方見えない通貨の方は、誰かに親切にしてもらった時に「本当にありがとうございました。助かりました」などと返すことを指します。
 これは「お礼」という行動で「親切」という商品に対して対価を支払ったことになるそうで、お金こそ介していませんがある種の取引が完了しているとのことです。

 先程の話を通していないと怒り出す上司にしても、本来であれば話を事前に通すという「敬意」や「尊敬」といった見えない通貨を事前に支払っていないため、上司は怒り出すのだ、と説きます。

 また他にも「褒めるとは、『音ゲー』である」とも説きます。

 初めてこの文を読んだときは「言い得て妙だなぁ」と感心しました。

 「褒める」と聞くとたいていの人はレトリックのほうを重視しがちですが、重要なのはむしろタイミングです。音ゲーに近いですね。相手が「これを承認して欲しい」というタイミングで言葉を放り込みましょう。

 

できないことをできるようにするには、システムを徹底的に変える

 発達障害を持っている借金玉さんは、その性質上、物をよく無くされるそうです。どれだけ気をつけていても、取引先に行くとお目当ての書類が見つからない。それで家に帰ってバッグをひっくり返してみるとポロッと出てくる。
 これを防ぐために借金玉さんが行ったのは「かばんぶっこみ」というもの。必要なものはすべて一つのカバンに入れ、書類を各所に散らばらせない。中身は重くなってスマートさのかけらもないが、それは仕方ない。諦めろ!

 また発達障害特有の「夜に一度集中しだしたら止まらず、睡眠時間がメチャクチャになる」というのも、こちらは素直に「早く睡眠薬を使いましょう」としています。
 借金玉さん自身、今までありとあらゆる睡眠法を試したそうですが、いずれもうまくいかず、「眠るのはスキル」という考えに至ったそうです。そしていずれの睡眠法も薬に頼る以上に効果があるものはなかったとしています。

 

共感を呼ぶフレーズの数々

 僕は本書を読んで、その実践的なライフハックの数々以上に、借金玉さんが時折漏らす、ある種「諦観」に近いフレーズの数々に思わず共感してしまいました。

発達障害という問題に真正面から向き合うことについて

 逃げて逃げて逃げて、ついに逃げ切れなくなったとき、やっと人生の問題と向きあったのが僕です。

 

発達障害でも多大な功績を残す人たちについて

 しかし、僕を失敗に導いたのは、まさしくそのような発達障害者たちの神話でした。(中略)とは言え、僕はまだ人生を諦める気はありません。神話的な発達障害者になることを諦めただけです。地道に愚直に積み上げることを今更ながら目指すだけです。

 

 努力、ということについて

 努力なんてものは、やりたいときにやるべき環境が整っていたらやればいいことです。

 

 最初にこれらのフレーズを見たときは、まさに僕のことを言っているのではと思ってしまいました。
 僕はこのブログを開設すると同時に勉強の習慣を身に着け、そして今に至るわけですけども、なぜ僕が今更ながら勉強をできるようになったのかと言うと、それは借金玉さんと同じように色んな嫌なことから逃げて逃げて逃げて、その果てに「あぁ、こりゃ逃げ切れないな」と悟ったからなのです。
 また過去には数多くの自己啓発本やビジネス書を読んではそれに触発され、その中に書いてあることを実践したりもしましたが、いずれもうまくいきませんでした。天才たちはいとも簡単に「誰でも出来る」といいますが、それは彼らが天才だからこそ出来るんですよね。僕ら凡才は地道に一つづつ積み重ねていくしかありません。
 努力に関しても、自らが努力したいと思うようにならない限りは、どれだけ外からやらせようと思ってもうまくいきません。努力しなくてもいいような環境であれば努力など出来るわけもありません。だから努力なんてタイミングが来るまでしなくてもいいんですよ。

 以上が、本書『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』となります。
 発達障害を持ちながらもいかに現代社会を生き抜いていくかというライフハック術だけでなく、生き方についても何かを与えてくれる素晴らしい本でした。

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