どんなジャンルの物事でも、初めは不純な動機から始めてもいいと思うんですよね。
例えば僕が属しているIT業界は市場の成長と現役世代の引退による人手不足で比較的にほかの業界より稼ぎやすいわけですが、それに合わせてSNSでも各種インフルエンサーが「エンジニアは楽して儲かります!」と言うわけですよ。
そうしてインフルエンサーの言葉に触発された若者が希望を持ってITの世界に飛び込もうとすると、現役世代が
最近ヌルい気持ちでエンジニアを目指すやつが増えた(クソデカため息)
とか言っちゃったりするんです。
いや、もう、僕はこれ本当にナンセンスだと。
最初だからこそヌルい気持ちで始めていいんですよ。
先に真面目な話をしておくと、年々競争が激しくなる国際社会で外貨を稼ぐことのできるITエンジニアの不足は国にとっても死活問題で、疫病や自然災害などの人のコントロールの範囲外の事象に大きな影響を受けるサービス業よりもまずはエンジニアの数を増やさないといけません。
そんな中で現役の人間が動機は不純であろうとこれからエンジニアリング業を始めようとしている人間にイチイチ文句をつけるのはナンセンス以外の何ものでもないし、そもそも業界を活気づけようと思うと動機は問わず、まずは競技人口の増やさないとダメなんですよ。
身近な例で言えば、漫才は1990年代末期には大衆の文化としてはほぼ死に体でしたがM-1が登場して圧倒的に競技人口が増えたおかげで、まず漫才自体のクオリティが劇的に向上しました。そして2000年代にはTV業界全体として爆発的なお笑いブームを巻き起こすのです。
M-1が登場するほんの少し前の漫才はどれも内容が似ており、あくまで高齢者向けのコンテンツだったのが、2000年代末期にはオードリーの「ズレ漫才」、ナイツの「小ボケ漫才」、NON STYLEの「イキり漫才」など若者向けかつ多種多様なレパートリーを生み出すことになりました。
じゃあそんな多種多様な漫才を生み出した彼ら漫才師は最初から「俺は将来的に画期的な漫才を生み出してやるんだ!」という強い志を持っていたかと言うとそんなことはなく、ほとんどが「お笑いをやっているとモテそうだから」「他にやれそうなこともなかったから」「楽して儲けられそうだから」という不純な動機からお笑いを始めたことでしょう。
でも入り口こそそういう気持ちで業界に入ってきても、続けていくうちに「これ面白いな」とか「あんなこともやってみたいな」と思い始め、やがて本物になっていくわけじゃないですか。
だからまずは競技人口を増やさないといけない。
多い競技人口の中で競争をするからこそクオリティは上がっていく。
それに「ヌルいやつが増えた」と言う人って、その言葉自体がナンセンスなのと、自分自身が "ヌルいやつ" に簡単にアクセスされてしまう環境にいることをまず恥じたほうがいいと思うんですよね。
動機が不純であれ、現状よりも生活を良くしようと考えてる人間を素直に応援できる人間になりたいですね。