先日実家に帰った際、母親からこう相談されました。
「あんた、前に少しだけ話に出した斉藤さんのところのお孫さんの上の男の子、覚えてる? その子がね、今年でもう25歳になるんだけど5年かけて高校卒業してから一回も働いたことがないんだって。そろそろ年齢的にも厳しいし、なんかアドバイスしてあげれないかね?」
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斉藤さんというのは母親のヨガ友夫妻で、よく一緒にランチやディナーに行く間柄。以前母親に「お酒を飲みたいから」と頼まれてディナーの際に斎藤夫妻含めて車の送り迎えを2~3回したこともあり、僕も面識があります。
さてその斎藤夫妻、旦那さんの方がMARCH卒業からの大手商社でお偉いさんをやっていたこともあり、家庭はとても裕福。家は夫妻の送迎をした時に見たことがあるのですが、あまりの大きさと立派さで腰を抜かしたのを覚えています。団塊世代でのMARCHとなると下手をしたら今の東大・京大並の難易度になるわけですから頭の良さや努力量は相当なものでしょう。
そして斎藤夫妻には一人娘がいたのですが、旦那さんの方が入った会社で学閥にだいぶ苦しめられたようなのと、本人の「これからは女も学をつける時代だ」という考えからその娘さんをドツキ回して教育していたそう。ですがあまりのハードさに娘さんも音を上げてしまったようで高校時代には鬱になってしまい学校をドロップアウト。そこから家を飛び出したかと思えば2人の子供(斉藤さん夫妻からすれば孫)のシングルマザーとなり帰ってきたそうです。
自身の娘をハードに教育し過ぎた反省から今度は孫たちを甘やかしに甘やかしていたそうなのですが、今度はそれが裏目に出てしまったようで。上の男の子は高校を2回留年して5年かけてやっとか卒業するも、そこからバイトすらすることなくニート生活に突入。現在は25歳に。下の女の子は高校を1回留年して、あと3ヶ月で卒業というところで中退。こちらは高校時代からしていたバイトをそのまま続け、現在は家を出て一人暮らし。ただし男の影がチラチラしているので「ひ孫の顔も近いうち見れてしまうのかな…」と夫妻はボヤいているそうです。
下の女の子については男の影がチラつきながらもひとまず独り立ちできているので問題ないのですが、上の男の子の方が問題です。男で25歳になっても一度も就労経験がないというのは厳しい話です。いや、本人に勤労意欲があればそれこそ30歳以下ならどうにでもなるかとは思うのですが、それがないから困っているのです。
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いやー、なんとも難しい話ですよね。斉藤さん夫妻としては自身の経験から娘や孫に楽をさせたいと思ってやったことがことごとく裏目に出てしまうという。実際に僕は斉藤さん夫妻と話したことがありますが、奥さんも旦那さんもしっかりした人で、とても親として間違った教育をするようには思えませんでした。老後にこうやって夫婦でヨガに通うぐらいですから両人とも体型もスラッとしていて、奥さんは美人ですし、旦那さんは声の渋いダンディおじさんといった印象。
僕もこのブログで様々な勉強のモチベーションアップ法や、具体的な資格の勉強法などを書いていたりしますが、今回のようなケースはかなり難しい。というのも既に仕事のやる気があって、どうやったら年収を上げられるんだろうと悩んでいる人に対してはアドバイスできますが、そもそも勤労意欲のない人間に意欲を出させるのは非常に困難なのです。僕は高校時代3年間合わせて100時間も勉強しなかった怠惰な人間なので、やる気のない人間に対して「やる気を出せ!」と叱咤する意味の無さは重々理解しています。
母親から相談を受けてからしばらく「どうやったら25歳就業経験ゼロのニートを独り立ちさせることができるかな」と考えていたのですが、おぼろげながらも「今自分が彼の立場だったらこうするだろうな」というステップが見えてきました。
今回はその具体的な独り立ちのためのステップを話していきます。
結果は簡単には出ないと本人も周りも認識する
まず最初に精神論的な話になるのですが、何をするにしても結果は簡単には出ないと本人も周りもしっかりと認識する必要があります。
こういったいわゆる「人生詰んだ」(と自称する)人たちは往々にして今までの負け分を一気に取り返そうとして短期間での結果を期待しがちなのですが、今まで負けてきた期間が長ければ長いほどその負債を返済するのには時間がかかります。今まで負けてきたからこそ新しく挑戦するときにはできないことだらけで嫌な気持ちの連続だし、どうやってもやる気がでない日もあります。しかしまずは「それが当たり前」という自覚を持つ必要があります。ダメな時に本人も落ち込んではいけないし、周りも叱責してはいけません。
それに幸か不幸か斉藤家は裕福なので働く必要がないんですよね。巣に帰れば豊富に食料がある中で、新たに食料を探しに行くバカはいません。こんな状況でやる気を出してモリモリと働けるほうがイレギュラーです。だから「ここからどうやったら勝てるか」ではなく「どうしたら負けないか」という思考法で行かなければなりません。スモールステップで小さく勝って、少し大きな勝負に出てまた勝って、という戦術をとるのがベターでしょう。
適切な目標設定をする
人間焦って行動してうまくいくことは稀で、「ニートで25歳はヤバい」と思い大して考えずに行動すると却って深手を負って敗走するはめになってしまいます。そうなると再び立ち上がるのは以前より難しくなってしまう。
例えば慌てて正社員の職に応募しても25歳ニートを雇うところなどまずブラック企業ですし、それならとバイトに応募したところで16歳17歳の同じシフトの高校生から「歳行ってる割に使えないスね」とバカにされて泣きながらバックレるのがオチです。
そこでまずは
- いつまでにどうなりたいのかを具体的にイメージする
- 具体的に何がヤバいのか認識する
必要があります。
ひとまずの目標としては
30歳になるまでにデスク(オフィス)ワーク職に正社員として雇用され、年収450万円を取り、一人暮らしができるようになる
と設定します。
単純にお金を稼ぐ・正社員になるだけでしたら肉体労働をやれば可能かもしれませんが、25歳まで職歴がなかった人間に肉体労働はなかなか続けられないでしょうし、本人としてもモチベーションも湧かないでしょう。そういった点から割とイメージのし易いデスクワーク職で正社員、一人暮らしが可能な年収450万円というラインを設定しました。
そして25歳ニートの何が問題なのかというと、そもそも1日8時間×週5日の勤務が勤まるように思えない点と、頭の回転的に目の前の仕事がちゃんとこなせるのかという保証が何もないという点です。ここをひとつひとつクリアしていきましょう。そのための具体的な手順は以下の通り。
- 生活習慣を整え、体力をつける
- 資格を取得し、自信のコアを獲得する
- バイトを始め、1年で240日以上働く
- 正社員の仕事に応募する
- 最初に入った会社で実績を積み、転職で450万円を目指す
正社員への具体的なステップ
生活習慣を整え、体力をつける
先述の通り職歴のないニートが正社員になるための準備運動としてバイトをしてみたところで、高校生に馬鹿にされて泣いて帰るのがオチです。それよりも先にやること/やれることがあります。
まずは朝7時に起きて運動し、夜12時より前には寝るという、基本的な生活習慣を整えましょう。そして運動をすること。朝起きて家の周りを軽く一周するだけでいい。これを3ヶ月続けます。
運動習慣は何かと軽視されがちで、みなさんもリモートワークで「朝早く起きなくてもいいし、通勤もしなくていいから出社よりも集中して仕事ができるぞ!!」と思いながらも作業が全くはかどらなかった経験があると思います。通勤と出社による強制的な早起きと運動は、意外と仕事のパフォーマンスに影響を与えるんですよね。だからまずは生活習慣を整えることと、運動習慣を身に着け活力を出せるようになると同時に、勤務に耐えうる体力をつけましょう。
そして早寝早起き&運動の習慣が身についたら近所のスポーツジムに通うこと。期間は3ヶ月以上。トレーニングメニューはトレーナーに「ニートやってるんで、最低限の体力をつけたい」と言って組んでもらいましょう。しかしながら組んでもらったメニューを必ずしも毎回完遂する必要はなく、とりあえずジムに通うことを目標にする。やる気がでない日でもとりあえずジムに行く。シャワーだけ浴びて帰ってもOK。ここで重要なのは「今までダメダメだった自分も、3ヶ月キッチリジムに通うことができたんだ!」という実績と自信を得ることです。
資格を取得し、自信のコアを獲得する
生活習慣が整い、体力もある程度ついたとしても、まだバイトには応募しません。その前に「バイトで嫌なことがあっても折れない自信のコアとなる実績」を獲得しましょう。
具体的に言うと、資格を取得する。資格の中でも簿記3級がいいです。
なぜ簿記3級が良いかというと、以下の通り。
- 通年で試験を実施しているため、落ちても翌日受験が可能
- 自分には無理だというイメージが抱きにくい
- 100時間もやれば合格するという絶妙な難易度
本当であれば勉強した内容が実生活で即座に活きてくるFP3級をオススメしたいのですが、FP3級は年3回実施と、落ちた時の次回受験までのモチベーションを保つのが難しいので今回はパスしました。
他の候補で言えばフォークリフトの免許や大型トラックの免許を取ってみるのもよいでしょう。運転系の免許も「自分には取得は無理だ」という感情を抱きにくく、取得した際には「他の人が運転できない乗り物を、自分は運転しても良いと国からお墨付きを貰えている!」という思いが自己肯定感の向上にはとても役立つのです。それに運転系の仕事は業務上において他人とそこまでコミュニケーションをとる必要がないので、割と元ニートにはうってつけの仕事ではないでしょうか。
いずれにせよ資格を一つでも取っていると嫌なことがあったり年下からバカにされたとしても「言うても俺は簿記3級を取れているので致命的にできない人間ではない」「周りが持っていない資格を俺は持っているのだ」という心の拠り所を持つことができるのです。
バイトを始め、1年で240日以上働く
さて、ここでやっとバイトに応募します。
応募する企業側/店主側もある程度商売歴があれば「真面目に働きます!」と言ってやってきたニートを雇ってみて、早速問題を起こされたりあっという間にバックレられたりと嫌な思い出があり、ニートの採用には躊躇するはずです。ですからそこは真正面から面接に行かない。
普通ニートだと採用をためらうはずですが、僕は大丈夫です。その証拠として、まずは運動習慣をつけようと思い半年近くランニングをしていまして、最近ではジムにも通っています。勉強の方でも先日簿記3級を取得しました。ですので体力的にも能力的にも、よほど難しい作業でない限りは問題なく行えると思います。
こう言うのです。
相手が抱える不安をこちらから先に言語化してあげる。そしてその不安を払拭するために自分はどう行動して、実際に成果を挙げている証拠を見せるのです。ここまでの言語化と行動が出来ていればまず大抵のバイトには採用されるはずです。
そしてバイトに採用されたら1年で原則1日8時間×週5日で勤務。年間240日以上働くことを目指しましょう。一般企業の年間休日は120日前後なので365日-120日≒240日も働けられれば企業勤めができるだけの体力があると証明できます。
可能であればバイトをする傍ら1日1時間の勉強習慣を身につけられると良い。そこでFP3級やマイクロソフトオフィススペシャリスト、ビジネスナマー検定などがあると正社員採用の面接の際に大きな武器になります。バイトをしながらの勉強となると体力的になかなか難しいですが、まずは実際に勉強するしないはともかく、机に向かうところからやってみましょう。
正社員の仕事に応募する
バイトで年間240日以上働けたらいよいよ正社員の採用に応募します。ここでもバイトに応募したときと同じように
25歳までニートをやっていたとなると採用をためらわれてしまうかと思いますが、私は御社の不安を払拭できるよう実績を積んでまいりました。そのために最初のステップとしてバイトに励もうと思いましたが、自分はそれ以前の問題だと思い、まずはジム通いと勉強を継続することにしました。最初は家の周りをランニングするところから始まり、慣れてきたらジムにも通うようにしました。そして勉強もまずは身近なところで簿記3級を取得しました。
そのおかげもあってバイトも無事採用いただき、今後の展開を見据えて御社でも継続して働けるところをお見せしようと1日8時間×週5日で年間240日以上勤務することを決意。こちらは先日無事達成しました。同時に御社に採用された際にはスムーズに働けるようマイクロソフトオフィススペシャリストの資格やビジネスマナー検定の資格を取得してまいりました。
と語るのです。
自分は周りからどう見られているか正確に把握しているところと、それに対して計画を立てて実行。そして成果もキッチリ挙げている姿を見せられれば企業としても不安はだいぶ軽減されるはずです。
こうやって実績ベースで話をしてくれれば企業も面接でツッコんだことを聞かなくて済みますし、こちらも基本的には自分が今までやってきたことを話せばいいだけなのでそこまで話に詰まるということもありません。これがもし手ぶらで面接に挑むとなると企業側も「本当にコイツは仕事を継続できるのか?」と判断するために、あえて厳し目の質問をせざるを得なくなるんですよね。
それにこうやって実績ベースで話をしていると万が一落ちたとしても「今の自分の実績ではダメだったのか」と不要に傷つかなくて済みますからね。
最初に入った会社で実績を積み、転職で450万円を目指す
こうして正社員の仕事に就いたところで、元ニートの初年度の年収など300万前後がいいところでしょう。
そこから同じ会社で450万円を目指そうと思うと毎年1万円以上昇給をしないといけなくなるので、それは現実的ではありません。これからは転職を見据えて、数年後の面接で語れるような実績を出すことにこだわって仕事をしましょう。
例えば
- Excelの使い方をマスターして、部署の労働時間をチーム全員で年間200時間削減した
- 売上を前年から2割アップさせた
- TOEIC730点を超えて、基本的な英語の読み書きであれば可能
など、自分が年収450万以上もらうにふさわしいだけの実績やスキルがあることを数字として証明できるようになりましょう。
かつての僕がそうだったのですが普通に働いていると「これだけ頑張っているんだからもっと給料をもらってもいいはずだ!」と言いたくなるのですが、少なくとも自分が欲しいだけの給料分は売上を挙げていないと昇給は無理なんですよね。もし売上を挙げているのに会社が十分な賃金を払わないというのであれば数字として「自分はこれだけの働きをしているのに、これだけの給料とはおかしい!」と論理的に交渉するしかないのです。そうやって論理的な話ができるのであればもし会社側が昇給を拒否した場合はよそに転職すればいいだけですからね。
さて、以上のような話を僕は母親にし、斉藤さん夫妻に伝えてもらうように言いました。
本人にどのように伝わるか分かりませんし、話を受けて実際に行動できるようになるかも定かではありません。ですが具体的な就職プランが一度頭の片隅にでも入れば、どこかのタイミングで「挑戦してみるか」となるかもしれません。
これからの時代、家でゴロゴロしていても良い方向には転がっていかないので、少しでも行動するきっかけになれば良いなぁと思っています。
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