考え方

中小企業で部下の育成をするメリットは無いに等しい

 中小企業で部下の育成をするメリットがない理由としては「市場で評価されないから」が真っ先に挙げられます。

 たとえば自分が企業の人事担当だとして、面接の場で自身のマネジメント経験について「Fラン大卒の勤務態度も全くなっていなかった部下を熱心な教育によって無遅刻・無欠勤にさせました」と語る応募者と「明治大卒の非常に優秀な部下と円滑なコミュニケーションを図りながら売上を前年比2倍に伸ばしました」と語る応募者、どちらを採用するでしょう。

 当然のことながら大半の人が後者を選ぶはずです。

 僕のような、一般入試で英語が必須科目になっていないFラン私立大学出身の仕事のデキない部下を熱心な教育によって一人で仕事を回せるようにするというのは社会的にものすごく意義のあることですが、しかしながらそれが報われる可能性は現代の日本では非常に低いと言わざるを得ません。

 一部上場のMARCH・関関同立以上の大学出身でなければ入社できないような大企業ならまだしも、社員数が300人以下の中小企業では新人教育で「なんで社会人にもなってこんなことを指導しなければならないんだ」と思う場面に多々出くわします。たとえ相手が数年の社会人経験のある中途採用者だとしてもそれは変わらず、「遅刻しそうになったら一報入れようね」「振られた仕事が納期に間に合いそうにないなら相談しようね」など、おおよそ小学校ぐらいでそれは習得しといてくれよと思うことをいい歳した大人相手に言うのは本当に心が折れる作業なのです。

 しかしそうやってこちらが熱心に叱ったところでふてくされた顔を向けられることこそあれ、感謝されることはほとんどないのです。感謝されないだけならまだしも最悪の場合パワハラと訴えられる可能性すらあります。

 ここからは僕の体験談を語りますが、今でこそ僕はエンジニアとして大手企業で働くことができているものの、新卒のときは弱小メーカーの事務の仕事に就いておりました。そこでは上司が全く仕事を教えてくれないはサービス残業はやらされるはと、大変ブラックな環境だったのですが「Fラン大学出身の自分が早期に離職してしまっては次の就職先がなくなる」と思い、なんとか食らいついて仕事をしていたのでした。

 そうすると割と早い段階で後輩の指導を任されるようになったのですが、なにせ中小企業の採用ですから胸を張って仕事ができるといえるような子は入ってこないんですね。指導を任された子というのが一応は社会人経験のある子だったのですが、前述の通り「遅刻しそうなら一報入れようね」「納期に間に合いそうにないなら相談しようね」というレベルから教育しないといけませんでしたし、仕事をしていて納期遅れに苦言を呈しても「早めに巻き取ってくれない東城さんも悪いですよ」と平然と言ってしまうのでした。

 そのような勤務態度を上に打ち上げてみても、こういった子は課長やら部長のようなマネジメント層にはいい顔をしたりするものですから「えっ、あの子結構いい子じゃん。根は悪い人間じゃないんだから教育頑張ってよ」とまともに取り合ってもらえない。仕方なく教育を続けるものの、自分が上から仕事を教えてもらえなかった経験から噛み砕いて業務の進め方を教えると意外と成果物が出るようになって、それを横目に見たマネージャーが「なんだ、東城より仕事できるじゃ~ん」なんて言ったりするのです。

 湧き上がる怒りを抑えてなんとか評価面談に臨んでも、結局そういった部下の育成というのは数字として何か実績が上がるわけではないので評価されないんですよね。「あれだけ頑張って教育したのに会社は何も評価してくれないなんて、もう転職してやる!」と思ったところで、社内ですら実績をアピールできないのであれば当然事情を何も知らない他社で語れることは何もないのです。

 その後僕は20代後半で事務職を辞め、未経験からエンジニアに転身するのですが、次の会社ではマネジメントに関わることを徹底的に避けました。部下の育成に時間をとられるぐらいなら、まずは自分のスキルアップに時間を使う。通常の業務と並行で週末にはスクールに通ってプログラミングを勉強したり、またプログラムとは別に英語も勉強をしてTOEIC860点を突破するなど、とにかく「誰の目からでも理解できる、分かりやすい実績」を積むことを意識しました。

 元々は後に大手企業に転職することを見据えて分かりやすい実績を積むようにしていましたが、分かりやすい実績がゆえ社内でも評価され、何度も昇進の話が来るようになりました。そのたびに断りを入れてはいたのですが、最終的には無理やり昇進させられてしまったほどでした。とはいえもし僕が自分のスキルを磨くよりも社内での昇進を意識し、早いうちからマネジメントに意欲を見せていたらそれはそれで社内で評価されなかったんじゃないかなと思っています。

 なので特にその会社にいたい理由もないのであれば中小企業ではマネジメントに関わらず、自分のスキルを上げることに特化したほうが良いでしょう。

 とはいえ「中小企業ではマネジメントをやらず、ひとたびスキルが身についたら大企業に転職すべし」と言うと「サラリーマンたるもの後進の教育から逃げるとは何事だ!」と怒られ、特に中小企業の人事からは「採用しても短期で離職されると大幅な赤字となり、会社が立ち行かなくなってしまう!」と言われてしまいます。しかし社員とて年功序列・終身雇用制度も崩壊し、いつ自分のクビが切られるか分からない今の時代において自分のスキルを脇において部下を悠長に育てている余裕はないのです。

 仮に別の場所で「後輩の教育に追われ、自分のスキルを磨く時間がない」と愚痴をこぼしてみれば「レベルの低い人材が集まる会社にしか行けないお前が悪いのだ」とそれはそれで言われてしまうのでしょう。

 かつては僕自身も未経験からスキルを身に着けた者の矜持として、未経験採用をしてくれた企業を早期に離職することを勧めたくはなかったのですが、現状今の日本では自分のスキルを磨く方が明らかにインセンティブがあります。インセンティブがある以上、誰が何を言おうと今後もこの流れを止めることはできませんし、皆さんにもこの流れに早期のうちに乗ることをオススメします。



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