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考え方

企業が未経験中途に丁寧な教育を実施できない理由

 先日Twitterでこんな意見を見かけました。

自分は30歳で未経験中途としてIT業界に入ったが、周りは全く教育をしてくれない。仕事も基本的に丸投げで「分からないことがあったら聞いてね」というスタイル。業界全体で人手不足だって言ってるのに、こんなんでいいのか?

 ―分からなくもない意見ですね。

 僕も20代後半で事務職からIT業界に入っていますので、未経験から大して教育もされずいきなり現場に投入される辛さはよく分かります。僕が配属された部署は決して丁寧な教育が施されるような場所ではなかったのでいつも「もっとちゃんと教育してくれれば質の高いアウトプットが出せるのになぁ。手探りでやったって車輪の再発明にしかならないじゃん。自分が10時間かかってやっていたことを後輩には5時間でできるようにしていかないと会社としてスケールしていかないよ」なんて思っていました。

 しかしある程度社会のことが見えるようになってくると未経験中途に丁寧な教育を施すのはなかなか難しいと理解できるようになりました。もちろん丁寧な教育はほどこされるべきなのですが、リソース的な問題で実際に施すのは困難なのです。

 今日はなぜ企業が未経験中途に丁寧な教育を施すのが難しいか書いていきたいと思います。以前僕は『中小企業で部下の育成をするメリットは無いに等しい』という記事を書きましたが、それとセットになるような話です。

 僕はIT業界の人間ですので、この記事では第二新卒の枠からも外れてしまった30歳前後の男性が未経験からIT業界に入ることを想定します。逆に企業がどこに困難を抱えているのかが分かると、どうすれば未経験から新しい業界に潜り込めるかも見えてくるでしょう。

未経験中途は教育コストの回収期間が短い

 どの業界であれ、未経験から新しい業界に入り、そこでまともに自分の仕事がこなせるようになるには最低でも3年はかかるでしょう。その際に気になるのは「最初に投下した教育コストをいつ回収するか」ということです。

 20歳前後の新卒であればコストの回収フェーズが40年近くありますが、30歳の中途となると30年と、回収期間が10年も短くなってしまいます。

 それにITの様な技術蓄積型の仕事となると複利的に利益が上がるようになるので、純粋に「30歳の中途だと新卒に比べ回収期間が10年短くなる」という話ではないのです。

 

自ら学べない人間に教育を施しても大成する可能性は低い

 僕は「IT業界は未経験からでも3年真面目に仕事と勉強をすれば年収500万円を超えることが出来る夢のある世界だ」と度々語っていますが、それはIT業界がルーチンワークがない難しい仕事をしていることとコインの裏表の関係なのです。

 ITは常に新しい技術が求められます。過去の技術を調べ理解し再構築し、また新たな技術を生み出す。一度完成したと思っていてもこちらの想像の上を行くような不具合が発生するのはザラで、その原因解析と対策の立案には頭を悩まされます。

 そんな業界において「しっかりと教育してもらえれば、やれます!」と堂々と言ってしまうような人間はお呼びでないのです。

 社会のこともある程度見えるようになり、世間一般での仕事の進め方も多少なりとも身についている30歳のオッサンがその時点で自ら学ぶ気がないのであれば31歳で突然花開くということはないでしょう。

 それに教える側としても20歳前後の若者と、30歳のオッサン、教えるのにどちらが気を使わないという話でしょうか。特にある程度社会人経験を積んでしまっていると良い方でも悪い方でも仕事のクセがついているため、こちらが親切に教えたところで「前の職場では―」と言い出しこちらの指導を素直に呑み込まない可能性もそれなりに高くなるのです。

 強い解雇規制がある日本ではハズレを引くことができないのです。だからこそ企業も年齢の行った未経験中途にはどうしても及び腰になる。

 

未経験を採用せざるを得ない中小には教育リソースがない

 僕は現在大手と呼ばれる企業で働いているのですが、基本的には理系院卒か業界経験者しか入社ができない、そこそこ門戸の狭い会社となっています。では弊社の教育システムはどうなっているかというと、プログラミングの学習コンテンツは揃っているし現場での業務マニュアルも常に最新に更新されている。先輩・上司に仕事の進め方を聞きに行っても、誰もが明快に答えてくれます。

 しかし会社のネームバリューから有名大学出身者や中途の経験者を採用することのできない中小企業には教育のためのリソースがありません。お金がないからこそコンテンツも揃えられないし、教える側も自分自身が丁寧に教えられてきていないので、後輩にどう教えてよいかわからない。

 未経験を採用しなくてもよいような体力のある大手ほど未経験を教育することができ、未経験を採用しなくてはならないほど体力のない中小は未経験を教育できないという、壮大なパラドックスがあるわけです。

 まず教育というものは基本的に報われないのです。中小で大切に育てていてもスキルが身につけば大手に吸い取られてしまいます。能力のある人間であれば経験3年で転職すれば年収150万円は上がるので、自分にある程度スキルが身についたと感じる中で採用時の低賃金のまま働いてくれる道理がないのです。

 教える側にしても未経験に熱心に教育したところで、その実績が会社内や転職市場で評価されることは少ない。熱心に教えれば後輩は高確率で自分に甘えるようになるし、それで結果が出るようになったとしても後輩本人がすごいと思われるだけで教えている自分が褒められることは稀。まして自分がどこかのタイミングで転職しようと思ったときに面接で「自分は未経験中途をゼロから育てました!」と語っても「何がどうできるように教育したか定量的に語ってみてください」と言われた瞬間言葉に詰まるでしょう。下手に後輩の教育をするよりも、教育担当のポストを蹴ってひたすら自身の実績を出していたほうが周りからは何かと評価されるのです。

 以上から中小に残るのはその性質上どうしても「大手には転職できない一癖あるひとたち」になりがちなのです。そうすると会社に残っている人たちは元々人に教えるスキルが低い上に、自身も教育してもらっていないので後輩にどう教えたら良いかわからないのです。これは非常に良くない負の連鎖です。

 

未経験がどうやって中途から採用を勝ち取るか

 教育が不要で、自ら学ぶ意志があることを伝える。

 具体的には資格を取るのが良いでしょう。ITであれば基本情報技術者試験というものがあり、それが取得できればITの基礎的なスキルが身についていると証明できる上に、働きながらでもコツコツ勉強できるというシグナルにもなるのです。

 30歳を超えて裸一貫の状態で応募されると企業も身構えるので、何かしら企業側に安心感を持てるような材料が必要になります。もし資格が取れないとしても電子工作を持っていくであるとか、自分が現職で作った業務マニュアルを持っていくだとか、何かしら「コイツを採用しても、最悪何かしら使い所があるだろう」と思ってもらえるようにしなくてはいけないのです。

 

 以上が「企業が未経験中途に丁寧な教育を実施できない理由」でした。

 これから人材不足となる時代にあって、ただ単純に「なんで企業は教育をしないんだ!」と怒るだけでなく、なぜできないのかを考えると抜け道が見つかるものです。

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