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考え方

世の中を冷静に見る若者と、「親ガチャ」

 2021年9月、元々ネットスラングとして使われていた「親ガチャ」という言葉が地上波のニュース番組でも取り上げられ世間では大きな論争を巻き起こしています。

 「親ガチャ」とはどのような親のもとに生まれてくるかで人生の大半が決まってしまうという状況を揶揄した言葉で、テレビのコメンテーターが反発の言葉を唱えるものの、世の中の様々な事象がデータとして実証されてしまう昨今、その言葉は宙に虚しく響き渡るだけとなっています。

 例えば世帯年収と子供の学力を調査した結果では、親の年収が多ければ多いほど子の学力スコアも高いというキレイな比例関係を見せており、また東大生の親の世帯年収を調査したところ半数以上が950万円を超過と、日本の世帯年収平均が550万円前後だということを考えるとその数字は異常とも言えます。また学力ではなく運動能力も66%が親からの遺伝と言われており、さすがにこの状況で「本人の努力だけで人生どうにでもすることができる」とは語りづらいでしょう。

 一昔前までは特に大学受験の業界で「正しい勉強法を身につければ、東大を始めとする難関大学に合格できる!」と盛んに謳われていましたが、そもそも "正しい勉強法" にアクセスすること自体がひとつハードルがあり、またそういった勉強法を唱える受験アドバイザーも実は裕福な家庭の出身であることが大半であると明らかになっています。

 例えば日本における受験アドバイザーの第一人者である和田秀樹氏も長らく自身の著書で「父親は関西の無名私立大学の出身」と言っていましたが実は関西大学を出ていたことが明らかになり、またビリギャルも蓋を開けてみれば名古屋の有名私立中学(高校)出身でビリになったのは国語のみで英語は平均以上の偏差値があったとのことでした(それで英語と小論文しかない慶応SFCに合格)。

 とはいえ成功するためにはかなりの割合で運が必要であると明らかになってくると同時に、成功するためには一定以上の努力量が必要ということも判明してきました。現在ではチャンネル登録者数1000万人を超え、誰もが日本一のYouTuberと認めるHIKAKINさんが数年前に公開した『ヒカキン密着24時 〜YouTuberの裏側〜』はHIKAKINさん自身が撮影・編集を行っている10分程度の短いドキュメンタリー動画になっているのですが、YouTuberがいかに大変な職業か視聴者に絶大なインパクトを与えました。そしてそれよりも更に数年前にはAKBにてアイドルグループとしては異例となる、コンサートの壮絶な舞台裏を描写した『DOCUMENTARY of AKB48』が公開され大きな話題を呼ぶなど、今どきの若者は良くも悪くも世の中を冷静に見ることを "余儀なく" されているのです。

 一部では「『親ガチャ』は努力することから逃げる若者を肯定する最悪のフレーズだ」と叫ぶ方もおられるようですが、少なくとも今の若者で「生まれですべてのことが決まってしまう→だから努力をしなくても良い」と思っている人間はほとんどいません。このフレーズは今まで散々現場の実態を無視しして過剰なまでに唱えられてきた「やればできる」という言葉に対しての揺り戻しとして用いられているだけなのです。

 さて、ここからが今日の本題なのですが「親ガチャ」という言葉が表すように、世の中「自分の努力でどうにかなる領域」と「どうにもならない領域」というのは確実に存在します。冒頭の大学受験のように誰もが平等なペーパーテストで評価されるため「物理的に成功することが可能」であるからといって「実際に成功可能」かどうかはまた別の話なのです。そして「やればできること」と「やってもできないこと」を正しく区別するのは人生にとって非常に重要なのです。

 僕はここ数年ブログやTwitterを通じて勉強記録を発信していることもあり、僕と同じくスキルアップの勉強を始める人を多く見るのですが「人生詰んだ」「これで一発逆転したい」など、割と社会的には不利な状況から成功を願って勉強を始める人ほど今までの負け分を取り戻したいからか「弁護士になります」「公認会計士になります」と無茶な行動に出たりします。そして数ヶ月としないうちに音沙汰がなくなります。

 今まで1分の勉強習慣もなかった人間が人生を少しでも良くしたいのであれば、まずは毎日1分以上勉強を継続することから始めるべきです。数千時間かかってやっと受かるか受からないかものに挑戦する前に、努力すれば確実に成果が出るものに挑戦しなくてはならないのです。

 「できること」と「できないこと」を正しく区別できていないばっかりに、「できないこと」ばかり時間を注入して結果が出ないものですから途中で投げ出して諦めてしまう人を僕は数多く見てきました。そういった悲劇をなくしたいと前々から思っていましたが「親ガチャ」というフレーズが台頭するように、今の若い人は冷静に世の中を見れるようになりつつあるのかなと感じている昨今です。

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