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【ネタバレなし】何一つ収束しない物語『アバター/ウェイ・オブ・ウォーター』

 昨日2022年12月29日にイオンシネマのレイトショーで『アバター/ウェイ・オブ・ウォーター』のHFR・3D日本語吹き替え版を観て参りました。

 前作の『アバター1』は公開当時に映画館で一度観ただけで、そこまで思い入れはない状態。ストーリーは正直ほとんど覚えていませんでした。

 当時の『アバター1』はまさにイベントムービーと呼ばれるべきもので、みんなこぞって観に行っては『3Dどうだった?』とストーリーよりも3Dの感想について語り合っていたのをよく覚えています。それまでの3D映画というのは赤と緑のセロファンが張られた雑なメガネを掛け、映画本編もメガネを掛けるとほぼ白黒状態になるわ大して飛び出したりはしないわ頭は痛くなるわでとても観れた代物ではありませんでした。

 ところがあの『タイタニック』の監督、ジェームズ・キャメロンが十数年ぶりに新作を作り、しかも今までの子供だましではない平成最新版の3D映画を作るということで大きな話題を呼んだのでした。

 当時僕が観たのは数ある3D上映方式の中でも一番質が悪いXpanD方式で、確かに今までの3Dよりかは質は格段に上がっていたもののやはり30分ぐらいで頭が痛くなり、メガネをつけたりはずしたりを繰り返しながら何とか2時間半の上映時間を乗り越えました。当時から指摘されていましたがストーリー自体は単純なのでメガネを数分外したぐらいでは理解に影響が出るようなものではなかったのですよね。「キャメロンとしては本当はもっと深いストーリーを作れるが、今回は3Dに集中してもらうためにあえてシンプルにしたのだろう」とうことで、物語の面白くなさもそこまで気になりませんでした。ともかく平成最新版の3Dを体験できたということで、総じて満足感は高かったように覚えています。

 

 そこにきて今回の『ウェイ・オブ・ウォーター(WoW)』なのですが、3Dにあまり良いイメージを持っていなかっただけに当初は2D字幕を観ようと思っていました。ところが上映時間を調べているうちにイオンシネマがハイフレームレート(HFR)で上映すると聞きつけたので、これはHFRを初めて体験するには良い機会だということでイオンシネマのHFR・3D吹替版を観に行くことにしました。前回の経験を踏まえ、3Dメガネを自前のメガネに固定できるようセロハンテープも持参して、鑑賞の準備は万端です。

 

 当の『WoW』の感想ですが、映像95点/ストーリー30点です。いや、ストーリーは20点ぐらいかもしれません。とにかく上映時間の192分が長かった! 『ロード・オブ・ザ・リング』や『トロイ』などそこそこ長い映画を劇場で観てきましたが、今回はかなり苦痛に感じましたね・・・

 初めて体験するHFRは新鮮だったんですよ。「へー、レートが上がるとこんなにも映像がヌルヌルになるのか!!」と驚きましたし、3Dも前作とは比べ物にならないぐらい奥行きを感じました。画面も暗くなりませんでしたし、3Dによる目の疲労感もほとんどなし。ただ、画面の90%以上がCGで作られているので「なんか電気屋のゲーミングPCコーナーで流れているデモムービーみたいだな」という感想は最後まで払拭できず。

 

 ストーリーの何がダメかというと、とにかく物語が収束しないこと。映画の中で困難に打ち勝ったり、課題を解決するということが何一つありませんでした。そして主人公の不在。この映画を観た人に「主人公は誰?」と聞いてみても、恐らく誰も答えられないのではないでしょうか。

 序盤はそれなりに伏線が張られるんですよ。

  • 人間とナヴィのハーフで、アイデンティティをグラつかせている長女
  • 無鉄砲なことばかりして問題ばかり起こす次男
  • 自分の責務を果たし、弟の尻拭いに奔走する長男
  • 喧嘩っ早く、ところどころヤベェ片鱗をのぞかせる嫁
  • 威厳はたっぷりだが、現場では思ったほか役に立たない親父

 他にも「強い女性」を描き続けていたキャメロンが「母性の限界」をうっすらと描き始めるなど、それらしい伏線や設定はやまほど登場するのに、後半で全く回収することなく映画が終わっていったことには唖然としてしまいました。

 ストーリーとしての明確な主人公が存在しないのと同時に、登場人物は最初からずっとアバター(ナヴィ族)しか出てこないので感情移入がものすごくし辛いのです。アバターの造形が中途半端に人間に寄せている分、不気味の谷現象とも言うべき「近いからこそ逆に小さい粗が目立つ」事態になっています。感情移入し始めるとちょっとした出来事で「あ、やっぱ感情移入無理だわ」となってしまう。

 『アバター1』の時は一旦人間であるジェイクに感情移入させて、それがアバターになるわけですから、感情移入のスライドが非常にうまく行われていました。「半身不随となり生きる目的を失った男がアバターとなることで、本当の自分の使命を見つける」というシンプルで力強いメッセージがあったのですが、今回はない。「どうせまた人間が攻めてきて、それを防ぐだけでしょ?」という我々の事前のストーリー予想から一歩も出ていないのです。

 

 唯一褒められるCGは間違いなく現時点で世界一のクオリティですが、それを延々と映し出されてもねといった感じです。水の表現はCGの中でも最高峰に難しいものの『WoW』では全く違和感なく描写されています。ただ「CGを見せたいがためのCG」に留まっており、ストーリーが全く進行しないのです。これなら尺は90分切れるぞ。というか本編尺自体が90分だったらそこそこ傑作になったと思います。

 

 といった形で本作『アバター/ウェイ・オブ・ウォーター』はあまりオススメはしませんが、令和最新版の3D体験としては間違いなく最高のものになりますので、劇場で鑑賞する際はIMAXで体験するのが良いかと思います。

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