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AmazonPrime 映画

ベーシック×デジタルの組み合わせ『グランツーリスモ』

 AmazonPrimeで『グランツーリスモ』を観ました。

 ※今回の作品はAmazonプライム会員であれば無料で視聴可能です。→リンク

上映時間

 134分

 

オススメ度

 星5点満点中:★★★★

 

ストーリー

 世界的人気を誇る日本発のゲーム「グランツーリスモ」から生まれた実話をハリウッドで映画化したレーシングアクション。

 ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に熱中する青年ヤン・マーデンボローは、同ゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーとして育成するため競いあわせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の存在を知る。そこには、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足した男ダニーと、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。厳しいトレーニングや数々のアクシデントを乗り越え、ついにデビュー戦を迎える彼らだったが……。<映画.com>

 

感想

 意外や意外の良品で、あっという間に最後まで観切ってしまったエンタメ映画でした。

 本作の監督であるニール・ブロムカンプの日本公開作品は今まですべて観ていて、デビュー作『第九地区』はすごく好きな作品です。ですが続く『エリジウム』や『チャッピー』は彼が現場での権限を持つようになり自身の思想が色濃く反映されるにつれて「ちょっと自分には合わないな」と感じるようになりました。
 →関連記事:主人公の不在と、監督の思想が共感できない『チャッピー』

 特に前作の『チャッピー』はブロムカンプが「デジタルこそ至高!」という価値観があまりにも露骨に出ていたためどうしても相容れなく、興行収入自体も大コケ。『エリジウム』もそこまで客が入らなかったブロムカンプとしても二作連続での不振に後がない状態となっていました。

 当初プレイステーションのレースゲームである「グランツーリスモ」が実写化され、監督がニール・ブロムカンプが務めると聞いたときは「これはなかなかいい人選なのでは!」と思いました。ゲームの実写化という意味ではVFXが得意なブロムカンプは適任でしょう。ただ問題はストーリー面です。ここがどうなるのかと不安に思っていたところ、実際に仕上がった映画を見ると意外や意外。本当に軸がしっかりしたベーシックなサクセスストーリーになっていたのです。そこにブロムカンプお得意のキレッキレのVFXが組み合わさって134分あっという間に最後まで観てしまいました。

 お話自体は「ゲーム『グランツーリスモ』が得意なボンクラを実際のカーレーサーに仕立て上げたら、大活躍してしまった」という、ストーリーを一行で表せて、かつ、それがキャッチコピーとなるハイコンセプトな映画になったのです。本当にストーリーはベーシックもベーシックな、ハリウッドで腐る程やり尽くされた王道のサクセスストーリーで捻りはゼロです。『ロッキー』や『トップガン』のような80年代に作られた120分尺の四幕構成サクセスストーリー。なのにハラハラ・ドキドキしてしまいました。

 まずこの作品、主人公のヤンのボンクラ加減がいいんですよね。昨今のハリウッド超大作の主演は興行的な理由からマッチョなイケメンスターを配したがりますが、本作でヤンを演じたアーチー・マデクウィは身長が196cmもあるのにボンクラ感が凄すぎて168cmぐらいしかないように見えてしまいます。まずこの時点で感情移入マックスですよね。

 それでヤンは大学もロクに通わずバイト代はゲームに注ぎ込んでせっせとオンライン対戦に精を出しているのですが、父親は「ゲームばっかりやってねぇでちゃんと大学行けやオラッ!」と叱るわけです。弟はプロのサッカー選手を目指していてそれなりに結果を出しているので父親は弟の方ばかり可愛がるんです。もう開始15分ぐらいで「ヤンは俺か!」ってなりました。

 肝心のレースシーンもどう表現されるのかなぁと期待していたら、文章ではうまく表せないですが、ゲームの「グランツーリスモ」のプレイ画面と実際のレースがうまくシンクロして、今までにないフレッシュなレース演出になっていました。正直同じコースを走るカーレース映画って1990年トム・クルーズ主演『デイズ・オブ・サンダー』でやり尽くされているんですよ。それこそ『ワイルド・スピード』シリーズのように市街地"カーチェイス"であれば景観も変われば障害物も手を変え品を変え出すことができるのでバリエーションを増やすことも出来ますが、カーレースとなるとそうはいかない。でもそこはゲームの実写化というバックボーンを得て、見事違和感なく「ゲーム的演出」というスパイスをまぶすことに成功しています。

 ただ映画を観ている途中で気になっていたところがあって、それは「なぜゲームが上手いだけのボンクラが実際のレースでも結果を出せるのか」という論理的な説明です。ヤンは実際のプロレーサーになってから破竹の勢いで結果を出すわけですが、そこの説明があまりなかったんですよね。「あ~このまま終わってしまうとほんと単なる絵空事サクセスストーリーになっちゃうな」と思っていたところ、ラストにそこがバシッと説明されてとても爽快な気分になりました。

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 ニール・ブロムカンプも前二作がコケたおかげでスタジオにガッチリと権限を握られ、脚本も初めて自分が書いていない作品となりましたが、そのおかげでストーリーもしっかりしたものになりました。やっぱり鬼才ほどプロデューサーにしっかりと管理されたほうがいいですね。

 本作はボンクラ主人公、良くできる弟、厭味ったらしいイヤなライバル、意外なサクセス、地に足ついたラブストーリー、師弟愛、あっと驚くサクセス、挫折と回復、サスペンスなどエンターテイメントに必要な要素がこれでもかとすべて詰め込まれています。やり尽くされた捻りのないストーリーと言われればそれまでですが、仕事に疲れて家で気軽に観る分にはこれぐらいがちょうどいいなと思いました。捻ったストーリーだと疲れた頭ではおっつかないんですよね。

 気軽に観れるエンターテイメントとしては本作はオススメです。

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