AmazonPrimeで『クリード 過去の逆襲』を観ました。
※今回の作品はAmazonプライム会員であれば無料で視聴可能です。→リンク
上映時間
116分
オススメ度
星5点満点中:★★★
ストーリー
ロッキー・バルボアと亡き父アポロ・クリードの魂を受け継ぎ、世界チャンピオンの座とともに家族も手に入れたアドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)。ある日、出所したダミアン・アンダーソン(ジョナサン・メジャース)が、18年ぶりにボクサーとして彼の前に姿を見せる。ある事件で刑務所に入り、全てを失ったダミアンは、アドニスだけでなく彼の愛する者たちにも牙をむく。<シネマトゥデイ>
感想
先日『クリード 過去の逆襲』を観ようとAmazonPrimeVideoを立ち上げたところ、『ゴースト・バスターズ(1)』がオススメに出てきたため「あれ、そういえば『ゴースト・バスターズ』のオープニングってどんな感じだったっけな」と思い、5分ほど観るつもりが結局2時間全部観てしまいました。
いやー80年代アメリカ製ブロックバスター映画の単純な筋書きって本当にいいですね。ストーリーが1行に表せて、かつ、それがキャッチコピーになる。展開も明確に4幕構成に分かれていて観ていて不安になることがない。
ところが最近の映画は展開があまりにも早すぎてストーリーが理解できないことが増えた気がします。これも脚本的に展開を早めているのではなく、完成段階で過剰なまでにカットを入れるため、展開が早いというよりかは説明不足というのが正しい表現になるかと思います。2008年の『ダークナイト』以降、その流れは明確に強くなっており、仮に映画館でずっとスクリーンを見てストーリーを追っているはずなのに、いまいち意味が分からない。僕に関して言えば最近は仕事で忙しくて映画館に行けないので家で映画を観ることも格段に増えたのですが、家だと2時間ずっと画面を観続けるのも難しいですよね。ちょっと酒を飲んだりつまみを食べている数十秒、数秒目を離しただけでもう意味がわからない。
ーーーーー
さて、前振りも長くなりましたが本作『クリード 過去の逆襲』(以下、クリードⅢ)はストーリーがものすごくシンプルで安心して全編を観ていられました。『ゴースト・バスターズ』を観た翌日に「クリードⅢ、とりあえず前半1時間だけ観ようかな」と思っていたら結局最後まで観てしまいました。
「ボクシングのチャンピオンが、最近出所したかつてのワル仲間とリング上で対戦する」。…ボクシング映画って話がシンプルになるからいいですよね。どうやっても最後には試合する展開になるし、その直前はトレーニングシーンになるだろうし、更にその前は試合するのしないのでただ揉めるだけ(結局試合はする)。実際予告編の2分だけで全部を語れてしまってるんですよ。
話自体は前述の通りシンプルなストーリーで、今まで『ロッキー』シリーズや、この『クリード』シリーズを追っている人からすれば「不満」ということはないと思います。ただ「傑作!」といって大いに満足する人はほとんどいないんじゃないかなぁとは思いますね。
ロッキーことスタローン不在の不自然さ
シンプルなストーリーゆえに、ところどころ粗さも目立ちます。
やっぱりまずはロッキーことスタローンが不在であるにも関わらず、ストーリー上、そこに対して言及がないのはあまりにも不自然。いやね、『クリード』シリーズも今や3作目ということで、ここいらでロッキーが不在になっても別に問題はないんですよ。ただこの『クリード』シリーズがロッキーありきの話でスタートしているので、そこのケアがないのはあんまりではないのか。(もしかして僕が見逃しただけなのか?)
ロッキーことスタローンも今や77歳なので、老衰なりなんなりで死んだことにすれば良かったのに。1作目ではガンになっていたので、それが再発したことにしても違和感はまったくない。ロッキーが死んでしまえば(アドニス・)クリードはいよいよ一人でボクシングをしなくてはいけなくなったという成長譚にもなります。50年近く続くシリーズなので、そういう主要キャラの死も「誰もがいつかは死に、それでも物語は続く」という深みのある話になったのに。
本作の後半でクリードの母であるメアリー・アンも脳梗塞か脳卒中で死ぬわけですが、メアリーの死をもって(自分より上の)血縁関係者はすべていなくなります。ここで「今までは自分より上の世代のために戦わなければならなかったが、これからは新たに自分が築いた家族のために戦うことになる」という世代交代の側面も強調できればもっと良かったのではないか。
かつてのワル仲間、ダミアンと戦う理由が希薄
希薄というか、実際戦う理由が無いんですよね。正直そこがかなり気になっていましたが、まぁ映画ということで無理やり納得しましたが。自分のせいでダミアンが刑務所に入ってしまったという設定ではあるのですが、そこをリング上で精算する意味がないという。戦う理由が希薄で負けたときのデメリットがないからラストバトルにのれない部分もあります。
伏線を張りっぱなしで放置する
自分の娘に聴覚障害があり、娘とのやり取りは基本的に手話でのやりとりになるという設定があるものの、映画としてはそこまで有効に作用することなく物語が終わってしまいました。正直娘とのエピソードは本編から9割カットしても成立してしまいます。
そして一方嫁の方も1作目では進行性の難聴、というよりもうすぐ聴力が完全になくなってしまうぐらいの勢いだったのに今作でも耳は補聴器が必要ではあるものの普通に聴こえてしまっています。
せっかく娘は聴覚障害がある、妻は難聴を抱えながら歌手をやっている設定なのだから、それをうまくストーリーに反映させればいいのに。例えば「聴覚障害があり音が聞こえない娘は歌手をやっている自分の母親のすごさが分からないが、ボクシングという目で理解できるスポーツのチャンピオンをやっている父親のことを非常に尊敬している」という筋にしてもよかったのに。
最後にライバルに勝つ理由が希薄
『クリード』シリーズすべてそうなのですが、毎回敵の方がどうやっても強そうなんですよね。
主演のマイケル・B・ジョーダン(以下、MBJ)は体を十分仕上げているし、ボクシングの動きもしっかりしているんだけど、いかんせんライバルを演じる役者さんがMBJ以上に仕上げてきちゃうんですよね(笑)
『ロッキー』シリーズであれば、ライバルに勝つためには今自分に何が足りなくて、それを埋めるためにトレーニングをしているわけじゃないですか。『ロッキーⅢ』であれば俊敏性が足りないからそこを中心にトレーニングしますし、『ロッキーⅣ』であればそもそも勝てる要素がひとつもないから現代的なボクシングトレーニングを放棄し、薪割りや岩石運びという原始的なトレーニングを行ったりするわけです。
しかし『クリード』シリーズにおいては普通にトレーニングするだけで、何事もなかったかのように相手に勝ってしまうんですよね。そこ、なんとかならんかな。
監督の演出力
今回『クリードⅢ』では今まで主演を務めていたMBJが監督に初挑戦をしています。正直監督として眼を見張るような映像演出はありませんでしたが、役者同士の独特の空気感を作る演技演出はかなり上手かったなと思います。
特に数十年ぶりにダミアンと再会したクリードがダイナーで一緒にランチを食べるシーンのあの異様な空気感。本当はダミアンと繋がりを絶ちたいけど無碍にするわけにもいかないからその場は笑顔で取り繕う。いやーな空気感演出はさすがだなと思いました。
俺が考える『クリードⅢ』
ここまで色々と本作について語ってきましたが、僕には『クリードⅢ』がこうだったらよかったのになというストーリー案があります。
同じ児童養護施設出身で、現在は離れた場所で暮らすアドニスとダミアン。アドニスはダミアンを兄のように慕っているものの、ときおり見せる横暴な態度に複雑な感情を抱いている。彼らは別のジムから同じジュニアボクシング大会に出場し、お互い順当に勝ち上がったことから決勝で対決することになっていた。現在の実力差では圧倒的にダミアン有利であったが、アドニスにはある秘策があった。
決勝戦を翌日に控えた深夜、アドニスは街で偶然出会った養護施設でのかつての因縁の相手と喧嘩になる。揉み合いになる中、アドニスを救おうとしたはずみでダミアンは相手を殺してしまい、一人刑務所に収監されてしまう。
20年後アドニスはヘビー級チャンピオンとして幾度となく防衛を果たし名声を得るものの、SNSでかつての非行が取り沙汰され、その対応に追われていた。聴覚障害を持つ娘はボクシングで活躍する父を非常に尊敬しているものの、学校では耳が聞こえないことからいじめの対象となっていた。恩師であるロッキーはガンが再発し帰らぬ人となり、母親のメアリー・アンは脳梗塞に倒れ、予断を許さない状況になっている。目まぐるしく変わる状況にアドニスは次の試合を持ってして引退する旨を発表する。
そんな中、最後の引退試合が行われ、負けは明確だったものの判定でドローとなり王座陥落とはならなかった。急を要したスキャンダルの対応で慈善事業へ多額の寄付をした関係から思わぬ不透明な金の流れを生み、引退試合は「疑惑の判定」としてアドニスの名声は地に落ちしまう。
そんな折、数十年ぶりに出所したダミアンがアドニスのもとを尋ねる。プロボクサーとして活躍したいとの夢を語るダミアンにアドニスは当初こそ献身的なサポートをするものの、どこか煮えきらない態度に腹を立てたダミアンはメディアに過去のことを洗いざらい告白する。
遂にヘビー級チャンピオンに登りつめたダミアンはアドニスのことを繰り返し挑発する。しかしアドニスにはかつての覇気はなく一人家で塞ぎ込んでいた。そこに追い打ちをかけるようにメアリーの容態が悪化したとの報せを受ける。死の間際メアリーから「アポロはどんな時でも戦うことを諦めなかった。アドニスも戦うことやめようとしなかった。そんな親子の姿を見れて私は幸せだった」と告げられる。
こうしてアドニスは自分の威信をかけ、再びリングに立つ決意をする
以上が『クリード 過去の逆襲』の感想となります。
今までのシリーズが好きな方であれば観ていて損ということはないと思います。
ぜひ一度ご鑑賞ください!
※今回紹介した作品はAmazonPrime会員の無料体験でも視聴可能です。