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AmazonPrime 映画

人間ドラマの後退 映画『寄生獣 完結編』

 AmazonPrimeで『寄生獣 完結編』を観ました。

※今回の作品はAmazonプライム会員であれば無料で視聴可能です。→AmazonPrimeビデオ

 

上映時間

 117分

 

オススメ度

 星5点満点中:★★

 

ストーリー

 右手に寄生生物ミギーを宿す高校生・泉新一は、要注意人物として人間からもパラサイトからもマークされていた。
 いまや、新一の住む東福山市は、市長・広川を中心に組織化されたパラサイト達が、一大ネットワークを作り上げていた。
 一方、人間側も、寄生生物殲滅を目的とした対パラサイト特殊部隊を結成。アジトと化した東福山市庁舎に奇襲を仕掛けようとしていた。
 激化する戦い…。人間の子を産み、人間との共存を模索するパラサイト田宮良子は、新一とミギーの存在に可能性を見出したが、肝心の新一は、母親を殺された事件をきっかけで寄生生物への憎悪を募らせていた。
 そんな彼らの前に、最強のパラサイト・後藤が、その姿を現した。
 生きるのは人間かパラサイトか。そして「寄生獣」とはいったい何なのか。新一とミギー、最後の戦いがついに始まる。<Yahoo!映画>

 

感想

 前回に続いての実写版『寄生獣』のレビューとなります。今回は後半である『寄生獣 完結編』になります。

 

 いやー、本作は日本映画の悪いところが一気に詰まった映画になってしまったというか。確かに日本映画としては頑張っていますし、いいところもそれなりにあるのですが、どうしても悪い点が目についてしまう。

 まず1つ目に気になったのが、前編である『寄生獣』の方にはちゃんとあった「成長」という人間ドラマがこの完結編では皆無になっている点です。皆無どころか、成長したはずの主人公・新一がまた臆病な青年に戻ってしまっているのです。
 前編の最後、寄生された自分の母親を倒し、そこからパラサイト達を殲滅することを誓った主人公・新一に「おぉー!」と盛り上がったものですが、後半になるとまたナヨナヨしているのには観ているこっちが脱力しました。おい、あの興奮を返せ。

 2つ目に、これもまた日本映画の悪いところなのですが、登場人物がどいつもこいつも盛り上がったところで演説を始める。
 主人公たちが敵を追い詰める→敵が「人間とは何か」「生きるとは何か」の演説を始める→殺される。
 ずっとこの繰り返しです。
 日本映画の悪いところは何でもかんでもセリフでドラマを構築しようとする悪い癖があって、ドラマって別に「何を話すか」だけじゃなくて「何を話さないか」でも表現できると思うんですよね。元々前編からミギーと田宮良子が哲学的なテーマを長々と喋る役回りとして登場してきたんだから、長々と喋るキャラはこの二人だけで十分なんですよ。『寄生獣』が持っている哲学的なテーマはすべてこの二人が喋り尽くしていて、あとは観客の想像に任せればいい。劇中に出てくるミギーと田宮良子以外の演説シーンは全部カットしても何ら問題なく成立します。
 原作は週刊漫画ゆえに毎週長々と喋るキャラが出てきても違和感はありませんが、一本の連続した映画としてここまで喋るキャラが出てくると流石に物語としてノイズにしかなりません。

 3つ目にラストバトルの盛り上がらなさが挙げられます。
 これはもう監督のアクション構成が悪いのですが、新一とラスボスである後藤の間でまったく攻防がなく、新一は常に逃げ回っているだけなんです。
 普通のアクション映画で言うと、最初は新一と後藤が互角にやりやっているんですけど、時間の経過とともに段々と後藤のほうが優位になっていく。そして新一が絶体絶命のピンチに陥って「あぁ、新一がヤバイ!」というところで、こっちがアッと驚くような方法で危機を脱出する。
 これがアクション映画のラストバトルの定石だと思うんですよ。
 ただそれが本作ではまったく表現されておらず、ものすごくアッサリと後藤を倒してしまう。
 えっ、後藤って最強最悪の存在じゃないの・・・? なんなら対・母親戦の時のほうがもっとやりやってた気がするけど・・・
 そして後藤を倒したあともそこで映画を終えればいいのに20分近く物語が続いて、ここも全部カットしても全く問題なく映画として成立します。こういうアクション映画はラスボスを倒したらすぐ映画を終わらせるのがベストで、昔あったキアヌ・リーブス主演の『スピード』でも脚本家のグラハム・ヨストが「『スピード』は主人公たちがバスを降りた時点で即座に物語を終わらせるべきだった。なぜなら観客の興奮のピークはそこで終わっていたからだ」と述懐しています。また『トランスフォーマー』の製作陣もDVDの音声解説の中で「敵を倒したら話は即座に終わらすべし」と言っています。

 前編が不満点がありながらもPG-12の範囲内でグロシーンを描き切ったところや、主人公の成長ドラマとしてそれなりに楽しめたのに対比して、後編はかなり厳しい評価となってしまいました。
 やはり気になるのは演説シーンの長さですね。ここをカットすれば原作にあったもっと面白い要素を詰め込めれたのに・・・ 残念でなりません。

 

※今回紹介した作品はAmazonPrime会員の無料体験でも視聴可能です。

 

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