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近年の日本映画のダメな点を排することに成功した映画『シン・ゴジラ』

 AmazonPrimeで『シン・ゴジラ』を観ました。

※今回の作品はAmazonプライム会員であれば無料で視聴可能です→AmazonPrimeビデオ

 

上映時間

 119分

 

オススメ度

 星5点満点中:★★★★

 

ストーリー

 東京湾・羽田沖。突如、東京湾アクアトンネルが巨大な轟音とともに大量の浸水に巻き込まれ、崩落する原因不明の事故が発生した。首相官邸では総理大臣以下、閣僚が召集されて緊急会議が開かれ、「原因は地震や海底火山」という意見が大勢を占める中、内閣官房副長官・矢口だけが、海中に棲む巨大生物による可能性を指摘。周囲は矢口の意見を一笑、しかしその直後、海上に水しぶきとともに長く巨大な尻尾が姿を現す…。<Yahoo!映画>

 

感想

 映画『シン・ゴジラ』。お盆休みで時間もあったのでAmazonプライムにて人生二回目の観賞。

 いやー、これは本当に面白い映画です。ゴジラという日本を代表するポップアイコンキャラクターを使った映画でありながらも、非常にビターな社会派映画に仕上がっている。

 この映画を取り上げるのも今更感がありますが、今回僕はこの映画に対して2つの構成から語りたいなと思います。

 

①何を話さないかによってドラマを構成している

 僕は以前『寄生獣』のレビューで、「何を話さないかでもドラマは表現できる」と言ったのですが、『シン・ゴジラ』はまさにこれを体現しています。

 本作は「現代の日本にゴジラが現れた場合、現行の法体制のもと政府はどのように対応をするのか」という軍事シュミレーション映画になっているのですが、それゆえ難解な憲法・法律の用語が早口で飛び交い、まったく理解できない。全く理解出来ないものの、最終的には何をやりたいか分かる。それゆえ面白い。

 僕らは日常生活で人と会話するときでも、相手の言っていることを100%理解はしていないと思います。ところが映画となると、登場人物が言っていることを100%理解できないといけないと思ってしまうのか、割と"おバカ"な登場人物を配置し「ねぇ、さっきのはどういう事?」と言ったりして、それにかぶせて他の登場人物が解説をしたりします。
 映画としてはこれが本当によくありません。出来事の解説ってストーリーの進行としては全く進んでいないわけで、映画のテンポを止めてしまうことになりますし、そういった解説が入るとリアリティが急速に失われていくんですよね。だって現実世界じゃ、誰も僕らの疑問をいちいち解消してくれる都合のいい人間なんて現れないじゃないですか。

 そうやってあえて解説を入れないことによって「現代日本にゴジラが現れたらこっちの理解を超えるような用語がバンバン飛び交うことになるんだな」というリアリティを与えることに成功しています。
 またそこには人情もなにもなく、ただ淡々と現行法との照らし合わせと現場で取れたデータ(数字)をもとに仮説検証、そしてどう人を動かすのかという、非常にドライなドラマが展開されます。

 

②なぜゴジラは日本映画のダメな部分を解消できたのか

 『シン・ゴジラ』を観ていてもう一つ感心したのが

 『シン・ゴジラ』は最近の邦画でダメな部分を極力排している

 ということです。
 最近の邦画のダメな部分というのは

 1.安易なお涙頂戴モノにしている
 2.ストーリーに合っていないアイドルのキャスティング
 3.原作モノではない ※ゴジラはこの点が少し微妙

 僕が普段邦画をあまり観ない理由はここにあるのですが、ただなぜ日本の映画こうなってしまうのかという理由も分からなくないので非常にモヤモヤしてるんですよ。

 なぜ今の邦画がこうなってしまうのかというと、それは一言で言うなら「スポンサーが映画のことを分かってない普通の大企業だから」なんですよ。
 今の日本の映画に出資をしているのは映画とはそこまで密接な関係を持っていない普通の大企業でして、そこの東大京大の経済学/経営学部出身の人がどこに出資をするか決めているのです。彼らというのは多少は映画好きでしょうけども、映画に対してはあくまで素人で、データでしかどこに出資をするか決めません。

 ここで一つシュミレーションしてみたいのですが、みなさんがこの大企業の出資担当者になったと仮定してください。みなさんの前で映画のプロデューサーが新作の企画を持ってきましたと。そのときに、2つのプレゼンがあったらどちらを選びますか?

 A:「今回の映画は中高年をターゲットにした社会派映画で、現代日本の官僚制度を批判した映画になります」

 B:「この映画は子供からお年寄りまでターゲットにしておりまして、最初は笑えるんですけど、最後にはホロッと泣かせるんですよ」

 なんて言われたら普通の人はBを選びますよね。だってAはターゲットが中高年と言ってるんですから、観客動員数も限られてくる。片やBは全年齢がターゲットなので、最高1億2000万人が動員できるわけですよ。であれば当然収益がより期待できるBを選ぶのは当然です。

 そしてさらにキャスティングについて考えてみてください。

 A:「今回は社会派映画なんで、主人公はどこにでもいる地味なサラリーマンです。そこで主演は○○という世間的にはあまり名の知れてない俳優を使いたいと思います。彼は地味ながらも演技力があり、劇団の小劇場で1000人のハコであれば毎回満員にするほどの人気はあります」

 B:「今回はあの有名アイドルの△△を使います。彼はソロコンサートをやっても最低1万人は集めます」

 なんて言われたら普通の人はBを選びますよね。だってBの場合はソロコンサートで1万人集めるのだから、映画をやったら当然最低でも1万人を動員する見込みが立ってます。もしAを選んで映画がコケたら「なんでBを選ばなかったんだ!」と詰められるのは目に見えてます。

 最後に脚本について考えてみてください。

 A:「今回は昨年あの日本アカデミー賞で最優秀脚本賞を受賞した××によるオリジナル脚本です」

 B:「(1000万部売れた漫画を机の上にドーンと置く)」

 映画のシナリオは小説と違って、それ単体で読んでもあまり面白くないんです。特有の文法がありますし、映画の制作経験がない人が読んでもおそらく「(これ、おもしろいのか・・・?」)としかなりません。それが漫画をドーンと置かれ、「これを実写化します!」と言われたら最終的にどう映像化されるか簡単にイメージできますし、まして1000万部売れているとなると観客動員の予想が容易に立ちます。なので普通の感覚からしたら当然Bを選びますよね。

 ゴジラがなぜ日本映画の悪いパターンに陥らなかったかと言うと、それは制作会社である東宝が単独で資金を集めたことで、映画のことをよく分かってないスポンサーからの横やりが入らなかったからなんですよ。スポンサーは少しでもコケるリスクを避けるために「恋愛や泣ける要素を入れろ」「主演はアイドルにしろ」って言ってきますから。

 以上が『シン・ゴジラ』の感想と、現代の日本映画が抱える問題点とその発生する構造の解説となりました。

 僕と同じような考えで邦画を避けている方はぜひ一度観てみてください。
 今までの日本映画の常識を超えた素敵な社会派映画ですから。

 

※今回紹介した作品はAmazonPrime会員の無料体験でも視聴可能です。

 

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