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映画

【ネタバレ無し】マーベルスタジオが10年かけて積み上げたものと、失ったもの『アベンジャーズ:エンドゲーム』

 映画館で『アベンジャーズ:エンドゲーム』を観ました。
 ※今回はネタバレ無しです

 

ストーリー

 最強を超える敵“サノス”によって、アベンジャーズのメンバーを含む全宇宙の生命は、半分に消し去られてしまった…。
 大切な家族や友人を目の前で失い、絶望とともに地球にとり残された35億の人々の中には、この悲劇を乗り越えて前に進もうとする者もいた。
だが、“彼ら”は決して諦めなかった──
 地球での壮絶な戦いから生き残った、キャプテン・アメリカ、ソー、ブラック・ウィドウ、ハルク、ホークアイ、そして宇宙を当てもなく彷徨いながら、新たなスーツを開発し続けるアイアンマン。ヒーローたちは、大逆転へのわずかな希望を信じて再び集結する。はたして失った者たちを取り戻す方法はあるのか?
 35億人の未来のために、そして“今はここにいない”仲間たちのために、最後にして史上最大の逆襲<アベンジ>に挑む。

 最強チーム“アベンジャーズ”の名にかけて──。
 <公式HPより>

 

上映時間

 181分

 

オススメ度

 星5点満点中:★

 

感想

 公開初日のレイトショーにて鑑賞。

 今回の記事はネタバレ無しでお話します。(ただし前作『インフィニティー・ウォー』までのマーベル作品についてはネタバレが不可避のため、その点ご注意を)

 

 いやー、マーベルが10年積み重ねてきた映画史上最大のプロジェクトの完結編が本作『アベンジャーズ:エンドゲーム』となるわけですが、正直に言って僕は期待はずれでした。
 前作『インフィニティー・ウォー』の時にも思いましたが、マーベル映画の初期の頃にあった丁寧さは微塵もなくなり、ただヒーローたちが集まり右往左往している。

 そこにはカタルシスもなければ映画的な驚きも何もない。まさかマーベルが最後の最後にこのような映画を作ってくるとは思いもしませんでした。

 

 

 この映画、『エンドゲーム』とも銘打つので、もう上映時間の181分の間ほとんどをバトルシーンに費やすのかと思いきや全然やらないんですよ。具体的にバトルをやっていた時間をお伝えしたいですが、それもネタバレになるため言わないものの、おそらく皆さんが想像されている量の1/10ぐらいしかないはずです。

 

 「じゃあバトルをやらない代わりに何やってんの?」とお思いでしょうけども、生き残ったヒーローたちがサノスに消滅させられた仲間をどうやって取り返すかあーでもないこーでもないとずっと会話しているだけ。ほんとに、ずっと会話しているだけ。

 この会話シーンも本当にひねりがなくて、ただそのまま俳優さんたちが喋ってるのを撮ってるだけなんですよ。

 優秀なセリフ専門のライターがいるおかげか、ちょいちょい面白いギャグが挟まれるものの焼け石に水。「どうやったら観客を楽しませられるだろう」と頭を使った形跡が全く無いのです。

 

 本作を観ていて思ったのが「マーベルって人間ドラマを作るの、うまくないな」ということです。

 これは第一作『アイアンマン』の時からそうなのですが、人間ドラマはそこまで深く描いていません。では何がマーベル映画を面白くさせているかと言うと

  1. 見ていてワクワクするようなギミック
  2. 次の展開を期待させるサスペンス
  3. 恐ろしく緻密に積み重ねて構成したアクション

 の3つなのです。

 1番目は『アイアンマン』で顕著に現れていますが、初めてアイアンマンのスーツ装着シーンを見た時のあの興奮。その後次々に登場するアイアンマン=トニー・スタークの開発するガジェットの数々には心躍ったはずです。
 割と非現実的なガジェットであるものの「もしかしたらあと数年後にはこういう技術も現実のものとなるかも」と思わせるギリギリ感が素晴らしかった。

 2番目のサスペンスは『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』で見て取れますが、まるでゲームのごとく次々と課題が与えられ、それをクリアしていく様。展開の面白さだけでお話をグイグイ引っ張っていきます。

 3番目は『シビル・ウォー』を例にすると分かりやすいですが、マーベル映画は『マトリックス』や『300』のような、いわゆる革命的映像はほとんど存在しません。その代りに一つ一つの基本的なアクション動作を気の遠くなるような緻密さで積み重ねています。
 ・・・本当はここで『シビル・ウォー』のラストのアイアンマンとキャプテン・アメリカ、ウィンターソルジャーの3人のアクションシーンクリップをお見せできればよかったのですが、著作権の関係でそれは断念。(ご自身で調べて見ていただけると助かります!)
 このラストのアクションも最初見たときは「おぉ、すげぇアクションをやっている!」と驚きますが、一つ一つの動作を見ていくとそこまで複雑なことをやってないんですね。ただそれを短時間に一気に詰め込んでいるからすごいアクションをやっているように見える。
 また "アクションの交通整理力" も特筆すべきポイントで色んなヒーローが入り乱れて戦い、画面の手前でも奥でも縦横無尽に戦うのに、まったく見辛くない。普通同じ画面の中に同時多発的にアクションが展開されると観客としては「どこを見ればいいの?」となってしまうのですが、それがうまく交通整理されている。

 

 いずれにせよマーベル映画の重要なポイントとしては「自分たちが確実にできることを気の遠くなるような丁寧さで製作する」という点が挙げられます。

 

 

 そんな作業を10年近く積み上げてきた今、そのフィナーレとして『エンドゲーム』が公開されたわけですが、本作にはその過去に積み上げてきた財産が最初から存在してなかったかのように映画が作られていました。

 

 まず前作『インフィニティ・ウォー』の時からも目につくようになったオーバーテクノロジーなガジェット。アイアンマンも昔はアーマーを一個一個装着して、それがカッコよかったのに今ではワンタッチでまるで仮面ライダーのように変身してしまいます。
 消滅してしまった仲間を取り戻すためにどうするか話し合うだけで全く先に進まないストーリー。中盤以降で仲間を取り戻すためにあるアイテムを入手する必要が出てくるのですが、それもほぼ何の苦労もなく手に入れてしまいます。
 こういった「仲間を助けるためにアイテムを入手する」というお題でサスペンスを展開するのはハリウッドお得意のお家芸で、そのノウハウは山程蓄積されているはずです。普通であれば「仲間を助けるためにあのアイテムを入手しないといけないが、あと1時間以内になんとかしなければならない!」というタイムリミットを設定して、それで時間ギリギリで「どうなんだ! 手に入るのか、入らないのか?」という展開を見せるのがセオリーです。しかし本作にはそれがない。
 アクションはさすがにラストで一大決戦が待ってるわけですが、それもバラバラに戦うだけで、統制が取れてない。せっかくラストで今までのメンバーが集結して戦うんだから、たとえば「スパイダーマン×ブラックパンサー」とか「ホークアイ×ドクター・ストレンジ」のような今まで見たこと無い組み合わせのアクションを見たかった。そういうコンビプレーをやらないならなぜラストにメンバーを集結させた!

 

 今までマーベル・スタジオが10年かけて積み上げて、しかもそれがマーベルのウリとなっている要素がすべて消し去られていました。

 

 

 

 そして僕がこの映画で許せない点が2つほどあります。

 

 まず1つ目が、「サノスが宇宙の均衡を保つために全宇宙の生命を半分に減らす意味が分からない」というもの。

 これは前作からの疑問だったのですが、僕はサノスのこの目的が全く納得できませんでした。
 もし宇宙の均衡を保つために全生命を半分に減らすことに説得力を持たすのであれば、この星で発生している問題が人口の増加によるものだという描写が必要なはずです。でもそれがこの映画にはない。そして実際に生命が半減されたあとも世界各地が平和になったような描写もありません。むしろ色んな公共サービスが停止してしまって不幸になっているようにも見えます。

 「世界各地で発生している問題は人口(生命)増加が原因で、それを解決するためにも生命を半減させないといけないということはみんな薄々気づいてる。だからサノスの目的にも思わず納得していまう。
 事実サノスが生命を半減させたおかげで各地の問題はすべて解決された。ここで仲間を取り戻すということは、またあの問題が噴出することになる。…人類はいったいどうすべきか。仲間を見捨てるのか? それともこのまま残ったものだけで幸せな生活を続けるのか? 
 …たとえより不幸な未来が待っているとしても、大切な人間を見捨てることは出来ない。だから、失われた仲間たちを取り戻すんだ!」

 というストーリーであればどれほどよかったか。

 

 そして2つ目が「仲間を取り戻すために使ったあの方法、それがアリならなんでもアリになっちゃうじゃん」です。
 ネタバレを避けるために深くは語りませんが、僕の中ではあの手法は完全にアウト。劇場でもあの方法が出てきた瞬間お客さんたちが白けていたのが見て取れました。

 このアベンジャーズシリーズはそれなりにリアリティを重視していたはずです。しかし本作で登場するあの手法はすべてをひっくり返してしまうような非常に安易で劣悪な方法で、「いったいこの10年間、どういう思いで積み重ねてきたんだろう」と思ってしまいました。

 

 

 以上が『アベンジャーズ:エンドゲーム』の感想となります。

 このアベンジャーズシリーズを追いか続けて10年近く。100年に一度の大型企画ということでずっとワクワクしながらこのフィナーレを待っていましたが、まさか最後の最後でこんな梯子外しが待っているとは思いもしませんでした。

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