―と先日の社内ミーティングの際にとある協力会社のリーダーさんから言われました。
僕はマニュアルを作成するのが好きで、そのメリットは計り知れないということで社内でも数多く作成してきました。
マニュアルを作成するメリットは以下の通り。
- 自分の業務知識を整理することが出来る。
- チーム全体の業務効率改善に貢献することが出来る。
- 会社で書かされる目標達成シートの実績欄に載せることができる。
マニュアルを作成すれば作業手順や自分がハマった落とし穴を残すことで次回の工数削減につながりますし、他人に見せることを意識すると知識のヌケモレも補完されます。次回実際に自分が作業しなくても誰かがやるときにマニュアルがあれば丸っと仕事を振れますし、マニュアルがあれば振られる方もイチイチ説明を聞かなくても済むというメリットがあります。そして業務の効率改善はどの業界でもホットなトピックとなっており、マニュアルは成果物として誰の目にも分かりやすい代物なので会社で書かされる目標達成シートに実績として載せることが出来るんですよね。
このようなメリットが有り、僕は今まで所属していた会社ではどこでも熱心にマニュアルを作成してチーム内に展開していたのですが、そうすると毎回「マニュアルを作ってしまうと自分で考える力が育たない」と言う人が現れるんですよね。
ふむ。この言説は一見すると立派で、理解できなくもないのですが、トータルとしてメリットはあまりないんですよ。
なぜかと言うと、自分が10時間かかってやった作業は後進には10時間以下で出来るようにしてあげないと、それは組織としてスケールしていかないからなのです。「自分の頭で考えることが重要だ!!」と言ってノーヒントでやらせて自分と同じ10時間で完了すればよいですが、15時間20時間とかかってしまったらそれは組織として衰退を意味します。そうなると自分の仕事はいつまで経っても楽にならないし、売上も伸びないから給料も上がりません。
自分の頭で考える力を養いたいのであれば、誰かがやった仕事はマニュアル化でちゃちゃっとルーティンワークにしてしまって圧倒的速さで片付けてしまい、余った時間で新規案件を獲得してそこで頭をひねればよいのです。
例えば義務教育でやっていた数学だって、分かるような分からないような解説をサラッとされた後で無理やり公式を憶えさせられるじゃないですか。最初は意味がわからなくても使っているうちにその公式の意味が分かるようになってきます。「自分の頭で考えることが大切」と言ってゼロから自分で公式を考えるとかアホじゃないですか。これはいわゆる車輪の再発明というやつで、今の時代に「俺は自力で三平方の定理を思いついた!! どうだ、俺は天才だろ!!」と言っても「(何いってんだお前…)」と憐れな目を向けられるのがオチです。
新しい業務に就いた時は、まずは意味がわかってなくても正解例をひたすら憶えていくほうが良いんですよ。正解例のストックがない状態では創造性も生まれません。英会話だって少ない英単語を使ってオリジナルの英文を繰り出すより、そもそも膨大な数単語を覚えるなり、実際に会話で使われている例文を丸っと憶えてしまってそれを使う方が相手に自分の思いが伝わります。正解例を知った上であえてそれを外すことでオリジナリティも発揮されるんですよね。
百歩譲って「普段から考える癖をつけないといざという時自分で何もできないのだ」とするのであれば、それを上の人間が許すのかと。最初の人間が10時間かかっているときに、また次の仕事でも同じ様に10時間かかっていたら「なんで工数減ってないの?」となるでしょう。そのときに「今回は別の人間が担当しており、彼には自分の頭で考えてほしくてノーヒントでやらせてます!」と言ってもさすがにそれは通じないのではないでしょうか。
とはいえ自分の頭で何でも解決できちゃうひとがリーダーになりますし、そういう人は往々にして部下にも同じことを強要してしまうものです。あとは僕がマニュアルを多く作成することで自分たちも作らないといけなくなることを恐れているのもあるんでしょう。まぁマニュアル作りというのは自分が既に身についてしまっている知識をわざわざ文書化するめんどくさい行為なので、拒否感を示す人がいるのも納得はしています。
これから人手不足も深刻化していきますし、社会全体のトレンドとしてもワークライフバランスというものが求められていくので、マニュアルを作らないにしてもチーム全体の作業効率化は意識していきたいですね。
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