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考え方

必要なのは、まともな労働者

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 給料は自分が稼いだ売上以上にはもらえない。
 言われれば当たり前なこの事実が世間ではあまりにも認知されていません。

 先日Twitter上でこのようなトピックが話題となっていました。

 この手のお話を見るたびに思うのは「あなたは給料がいくら欲しくて、なぜその額が適正だと考えて、それに見合う実績や売上があるのでしょうか?」ということです。子育てや転勤で一度離職した優秀な女性が安く買い叩かれているとは言いますが、そもそも彼女たちは自分の売上がいくらか知っているのでしょうか。

 もし知っているのであれば給与交渉は容易です。世間と照らし合わせて自分の取り分があまりにも低い場合は、マージン比率がおかしいと雇用主と交渉もできます。もし雇用主との交渉が決裂すれば転職で「今のマージンはこれだけなので、御社がマージン率を○○にしてくれれば転職いたします」と言えるはずなのです。それでも交渉がかなわないようであれば、今の給与が労働市場での適正価格。

 キツイ言い方をすれば今回のお話で必要なのは、まともな雇用主ではなくて、まともな労働者です。

 労働市場での適正価格を打破したいのであれば自らスキルアップして売上を伸ばすしかありません。そしてそもそもなぜワーキングマザー(ワーママ)が企業から敬遠されるのか、その善悪は別として仕組みを理解しているのでしょうか。優秀な女性が信じられないほどの低賃金で働かされていると言いますが、その「優秀」というのは一体どのような尺度から測っているのでしょうか。学歴が高いことやコミュニケーション力で誰とでもフランクに話せること自体は、賃金の高い低いとは直接的にイコール関係とはなりません。

 子供のいるワーママは夕方には家に帰り家事をしなくてはならないので、まず物理的に労働時間が短くなり、売上も落ちます。子供の体調不良などによる突発的なイベントによりいつ現場に穴を開けるか分からないので重要な仕事を任せられません。「そこは会社がうまいことローテーションで回せばいいだけ」と言われても子なし社員は常に穴埋めに奔走させられれば、不公平感はどうしても募ります。そうなると企業はそもそも子持ち女性を雇わないことにインセンティブを見出してしまいます。

 となると、元のツイート主は一体何を叫んでいるのか。時短で働いていても他の社員と賃金の差をつけないようにすればよいのか。それこそフルタイムで働いている子なし社員との間で扱いがあまりにも不公平になります。フルタイムで子供を預けられる施設を充実させればよいのか。さすがに子供としても幸せな結果にならないでしょう。国にお金を出させるといっても、それは子なし家庭のリソースを吸い上げるだけで、やはり不公平になります。専業主夫を養って子育ては男に任せるという方法がありますが、世の女性たちはどうもそれは嫌らしい。

 対策があるとすれば、まずは企業がワーママに対してどのような不安を抱いているか正確に理解し、そこに対策を講じなくてはなりません。「両親と同居しているので、突発的なイベントは両親に任せますので仕事に穴は空けません」「ベビーシッターを雇っているので(以下略)」などと言えない限りは、企業とワーママの間は一生平行線です。雇用主とて意地悪をしてワーママの採用を敬遠しているわけではなく、物理的な問題としてワーママを雇うリソースがないのです。その「リソースはどこから持ってくるのか」について労働者側から言及することはあまりにも少ない。

 「なぜ女ばかりがこんなにも労を折らなくてはならないのか」と言われれば、繰り返しになりますが専業主夫を養うしかありません。働く男は男で苦労はあり、労災の発生率は男性の方が高く自殺率についても男性の方が高いという結果が出ています。

 また企業の不安を解消する手段としてリスキリング(Re-Skilling)があります。育児期間中に学び直しを行うことでスキルを身に着け、自分が稼げる人間であると証明するのです。

 育児期間中のリスキリングではありませんが、かくいう僕もこのブログで経過を詳細に報告しておりましたように転職で年収を大幅にアップさせる武器の一つとしてTOEICに力を入れておりました。1年真剣に勉強することでTOEIC875点を取得することができ、それが評価され、今の会社に入ることができました。現場では英語を使うことはまずありませんが、忙しいサラリーマン生活の合間を縫って自分で決めた目標に向かってコツコツと努力できることがTOEICの点数という誰もが客観視できる数値として提示できたことによって評価につながったのです。

 先日2023年1月現在において日本の首相を務める岸田首相が育児期間中のリスキリングを支援する発表をしたところ、「育児期間中に勉強する時間などないだろ」と大炎上に見舞われました。岸田首相はあくまでも「育児期間にキャリアのギャップが生まれないよう勉強したい人を支援する」と言ったまでで、育児をしている人すべてが学び直しを行って自身のキャリアアップを図れと言っているわけではないのです。

 それに育児の忙しい時だからこそリスキリングの効果が発揮されます。先述の僕のTOEICの話もそうですが、忙しい育児期間中に勉強できているからこそいざというときでも踏ん張れるという証明になるのであって、育児中リスキリングというワーママの数少ない仕事復帰の足がかりを自ら潰すとは一体何を考えているのでしょうか。なんというか一手先、二手先のことを考えず、その場その場の思いつきで吹き上がりすぎです。

 最近は各所でやたらと簡単に「搾取されてる」と言い過ぎなんですよね。実際には搾取どころか保護されていることも多々あります。僕も新卒時代はサービス残業100時間をこなす傍ら年収は300万円にも満たず愚痴ばかり言っていましたが、後年自分の売上を調べてマージン率を計算したところそこまで無茶なことはされていないと分かりました。一昔前に吉本の芸人さんが「単独ライブで445席即完売してグッズも完売したけどギャラが2000円だった」という窮状を嘆くツイートがバズったのですが、キングコングの西野さんから「劇場の場所代とグッズの利益率の相場を知っていれば、甘めに見積もっても赤字は確実」と指摘されたという出来事がありました。普通の感覚からすると単独ライブでチケットが完売すれば20万ぐらいはもらって当たり前のような気がしますよね。でもそもそもの売上をよく知らないからこういった悲劇が起こるのです。

 冒頭で「あなたは給料がいくら欲しくて、なぜその額が適正だと考えて、それに見合う実績や売上があるのでしょうか?」というフレーズを書きましたが、これは昔に居酒屋で愚痴を吐く僕に対して親友から言われた言葉です。このフレーズをきっかけに僕は「自分の売上をアップさせないことには給料は上がらないのだな」と気付きスキルアップに励むようになるのですが、もしこの言葉がなければ僕の人生はもっと悲惨なものになっていたでしょう。

 まずは自分が置かれている現状を正しく把握するべきなのです。もちろんワーママが不利な状況に置かれている現状を叫ぶことは重要ですが、まずその手前でやれることがあります。男も男で「どしたん、俺で良ければ話聞くよ? あ~そりゃ雇用主が悪いわ」とかやってる場合じゃないんです。そもそも「まともな雇用主がいない!(私を適切に面倒見てくれる人間がいない!)」というのも、いい大人が真顔で叫んでよいセリフでもないでしょう。

 能力のある人間が実際に賃金を上げてくれないと、下の人間も上がりません。そして甘い言葉に流されてばかりいるのではなく、現状を変えようと思えばどこかで身を切るフェーズは必ず必要になるのです。



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