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映画

全編Bダッシュで駆け抜けた映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

 映画館で『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を観ました。

上映時間

 94分

 

オススメ度

 星5点満点中:★★★★

 

ストーリー

 ニューヨークのブルックリンに暮らす配管工のマリオと弟のルイージは、水道管の修理中に謎のパイプを通じて不思議な世界に迷い込んでしまう。キノコ王国にたどり着いたマリオは、離れ離れになったルイージを捜すことを決意。一方、ルイージは闇の国を支配するクッパに捕らえられていた。マリオはキノコ王国の統治者ピーチ姫の訓練を受け、才能を開花させていく。<Yahoo!映画>

 

感想

<Twiitter:The Super Mario Bros. Movieより引用>

思ったより揺れ、大満足な4DX

 愛知県の小牧市にあるシネマワールド小牧にて4DX初鑑賞。

 レイトショー価格で1300円で入場券が買えたのですが、4DXとなるとそこから更に1300円、メガネの料金で150円がかかると言われ、驚きました。僕としては4DXでもせいぜい+500円ぐらいかと思っていたので、まさか普通の入場料の倍以上もとられるとは…

 劇場内に入ってみても4DXは席数が少ないため普通のシートよりも少し大きめなぐらいで特に変わったところはない。「これで本当に普通の映画とは違う劇場体験ができるんかいな」と思っていて、いざ映画が始まってみると揺れる揺れる!!

 どれぐらい揺れるかと言うと、マックのMサイズのドリンクをフタ無しで置いていたら多分全部溢れるぐらい。4DXは座席が揺れる以外に水蒸気が出たり煙が出たりフラッシュが焚かれたり、さながら遊園地のアトラクションのよう。結果としてはものすごく楽しめました。通常料金の倍払っただけの価値はあります。

 とはいえ4DXとして完成度が高いかと言うと疑問符が残ります。揺らし方も4パターンぐらいしかなく、映画の内容と揺れがそこまでリンクしているわけではありません。USJのバック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライドは映像と揺れが完全にリンクしていましたが、この4DXは「決められたパターンから選んで揺らしている」感が強かったです。

 ただしこれが4DX初体験なのであれば払った料金分で「損した」という感覚にはならないはず。特に子供連れの場合4DXはかなり喜ばれるのではないかなと思いました。

 

全編をBダッシュで駆け抜けるような映画

 さて4DXの感想はさておき、ここからは本編の感想。

 いやー本作は圧倒的なスピード感で全編を駆け抜けましたね。本編尺が90分程度とタイトなこともありますが、それでも一切ダレることなく最後まで駆け抜けました。「テンポの早い映画」という表現は今まで多くの作品を形容するのに使われてきましたが、テンポが早い中でも必ずどこか緩む場面はあるはず。しかし本作は本当に最初から最後までスピードが落ちることなくラストまで持っていかれました。

 最新の技術を駆使したCGアニメながら、ストーリーも映像も挿入歌も全体的なテンポ感も80年代の90分尺ブロックバスター映画を思い出しました。一番雰囲気が近いのは『ストリート・オブ・ファイヤー』。あとは『トップ・ガン』や『ランボー2』『コマンドー』を彷彿とさせました。要するにエンターテイメントに特化してストーリーは極限にシンプルにし、派手な映像・音楽でグイグイ引っ張っていくという映画です。

 本作は日本公開に先立って全米で封切られた際、批評家からの評判はすこぶる悪いものの、観客からの評価は高いということで物議を醸しました。実際に鑑賞してみるとその理由がよく分かります。だって『トップ・ガン』や『ランボー2』みたいに中身空っぽなんだもん。批評家があれこれ語れるような余地がほとんどない。ストーリーラインだけなぞってみると恐ろしく捻りがありません。

 本作のストーリーラインは「現実世界で鬱屈した生活を送る主人公が異世界に転生し、そこで活躍し勝利を得ることで自信をつけ、現実世界に戻っても活躍する」というもの。本当にこれだけ。文字だけのあらすじを聞いたり脚本を読んだりしたら「それ何回やられたネタだよ」「それ本当に面白いのか?」となること請け合いです。最近の映画で言えば『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』がまさにそう。

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 この映画はとにかくテンポが早い。なぜここまでテンポが速いかと言うと、登場するものに色々なバックグラウンドがあるはずなのにそのほとんどを「みんな知ってるでしょ」という前提で説明を極限まで省いているのです。

 例えば冒頭でクッパがペンギンたちの住む氷の国を滅ぼそうとしているのですが、このクッパとは何者で、このペンギンたちも何者かは結局説明されない。マリオとルイージは現実世界で水道のトラブルに対応しようと土管に近づくとキノコ王国にワープしてしまうのですが、なぜ土管がワープ機能をもってしまったのかも説明無し。キノコ王国もキノコが生い茂り、独自のインフラシステムが整っているのが匂わされるのですが、やっぱり説明無し。でも我々は今までそういうマリオの世界観に嫌というほど触れてきてるので、大して説明がなくても「まぁそういうもんか」と納得してしまうんですよね。

 一本の映画としては確実に破綻しているのですが、マリオ映画としては大正解。近年の映画は「もうちょい説明したほうがいいんじゃないか」と心配になって、尺がどんどん長くなってしまう。本作はスタッフの英断で色んな説明をバッサリ切ったからこそ異常なまでのスピード感が生まれましたが、これってなかなかできることじゃないんですよね。

 そしてストーリー自体も「マリオがクッパにさらわれたピーチを救い出す」というシンプルな筋の中にあらゆる要素を詰め込みます。もちろん今までのマリオシリーズの内容もそうですが、そこにマリオカートやドンキーコング、スマブラ、マリオカートの要素を入れつつ映画として全く破綻してない。観ていて「あっ、これスマブラじゃん!!」などと発見するのがものすごくワクワクして楽しいんですよ。オチも伏線をキッチリと回収し、バシッと決まって爽快。まさか「なぜ彼らが『スーパーマリオブラザーズ』と呼ばれるようになったか」の理由を説明してくるとは思いませんでした。

 本作を一言で表すなら「プロが本気で作ったお子様ランチ」。一つのプレートにハンバーグと唐揚げとオムレツとエビフライが載っていて、基本的には濃い味付けなんだけれども絶妙に計算されて体に害が無いように設計している。「子供ってこんなの出しときゃいいんでしょ?」といった甘えはなく、ほんとにいい歳した大人がああでもないこうでもないと考え尽くして出しています。

 

みんなポリコレに疲れてる

 本作は全米で公開されるやいなや1億4000万ドルも稼ぎ出すなど、超特大のヒットを飛ばしています。公開3週が経過し、アニメーション映画としては『アナと雪の女王』『インクレディブルファミリー』を抜き、世界興収でも歴代最高を記録しそうです。ではなぜ本作がヒットしたかと言えば多くの映画ファンが指摘している通り良い意味でポリコレを無視した爽快なエンターテイメント映画に徹しているからでしょう。

 本作がポリコレの影響を受けているのはピーチ姫が戦うプリンセスになっていたことぐらい。最初はピーチが戦うことに多少違和感もありましたが、昨今ピーチ姫もスマブラではバッキバキに戦っているので、割とすぐに「これはこれでアリか」と思うようになりました。映画の内容としても最初から格闘センスのあったピーチと、何度も死にながらでないと上達していかないマリオで良い対比になっていたと感じます。

 昨今我々のようなサラリーマンが映画を観るときにポリコレを意識させられると厳しいんですよね。普段会社ではやれポリコレだのSDGsだのサステナブルだのと横槍が入って辟易しているのに、休日現実逃避のために映画館に行ってそこでもポリコレをやられたんじゃ気が休まる暇がありません。

 映画は昔からマイノリティを取り上げることが多くありました。映画の醍醐味は自分が知らない世界の人物の人生を追体験できるところにあります。だから映画の主人公がゲイだのレズだのバイセクシャルだのハンデキャップがあるだのと言われても「へー、彼らの世界はこんな事になってるんだ」と驚きがあったのです。ですが映画的な面白さを増幅させるためのキャラクター配置が、近年ではポリコレによって無理やりゲイやレズの人間をねじ込まれると途端に冷めてしまうんですよね。せっかくファンタジーの世界に入り込んでいるのに一気に現実の世界に引き戻されるというか。

 行き過ぎたポリコレに疲れている中で、それを吹き飛ばすマリオに観客は熱狂したんでしょう。

 

 4DXがまだ未体験でいつかは行ってみたいなと思っている方は、ぜひこのマリオに行かれるのが良いのではないでしょうか。CGアニメが故に3Dの奥行き感も非常にうまく出ています。またマリオがキノコ王国を駆け抜ける際の4DXの揺れも映画への没入感を高めてくれていましたしね。

 子供からお年寄りまでまんべんなく楽しめる映画はありそうでない中で、マリオは本当に幅広い観客にリーチしている映画だと思います。是非映画館で観るべき作品かと思いますので興味のある方はぜひ劇場に行ってみてください。



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