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映画

実家のような安心感と、その限界『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』

 映画館で『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』を観ました。

上映時間

 141分

 

オススメ度

 星5点満点中:★★★

 

ストーリー

 レティ(ミシェル・ロドリゲス)と息子のブライアンと共に穏やかに暮らすドミニク(ヴィン・ディーゼル)の前に、かつてブラジルで倒した麻薬王レイエスの息子ダンテ(ジェイソン・モモア)が現れる。父親が殺されたダンテは、ドミニクたちに復讐(ふくしゅう)を仕掛ける。<Yahoo!映画>

 

感想

 まずこの映画を100点満点で表すなら68点。今までシリーズを観てきた人であればまるで実家のような安心感でこちらを楽しませてくれるので「大きく外した」ということはないでしょう。しかしながらシリーズ6作目『EURO MISSION』や7作目『SKY MISSION』の時のような脂が乗り切った爽快感はありませんでした。

 この原因を探っていくとどうしても「長期シリーズのモノの弊害」というポイントに落ち着いてしまいます。今回はその点を深掘りして語っていきたいと思います。

 

大真面目な「そうはならんやろ」への慣れ

 本シリーズの売りは「そうはならんやろ」という荒唐無稽なアクションを圧倒的なバジェットで大真面目に映像化するところにあります。車は物理法則を無視して走り回るは、無駄に横転して大破するは、彼らが行った先々で爆破が起き建物が粉々になる。しかしどれだけの事故に巻き込まれようと血を一滴たりとも流さず瓦礫の山から出てくる。脚本を書いているとき、絵コンテを書いているとき、CGプリビズ(※)を作っているときに誰か「いや、これ無茶が過ぎませんか?」と止めに入りそうなものですが、止めないのか止めれないのか、結局スタッフ一丸となり本気で面白い映画を作ろうとしているのが嫌というほど伝わります。※精度の低いCGで制作した動く絵コンテ

 予告でもある通り本作ではローマの街を球体形爆弾が転げ落ちていくのですが、そもそもなぜ爆弾を球体にしようとしたのか意味が全くわかりません。それを主人公ドムたちが巧みなドライビングテクニックで車を使って必死に止めようとするのですが、まぁ街を破壊すること破壊すること。そして最後はあっと驚く方法でなんとか被害を食い止めるのですが、その方法も毎度のことながら「なんやねんその方法は」という顎の外れそうな手法。でも本気でビッグバジェットを投入して、CGも極力使わず撮影されているのでちゃんと面白いんですよね。こんな映画でありながらも制作費は3億4000万ドルに膨れ上がり、遂に史上9番目に高い制作費をかけた映画となりました。日本でもたまに低予算でおバカ映画が出てきますが、それらにはどれも「照れ」があるからダメなんですよね。スタッフ全員が「俺らが面白い映画ってもんを見せてやるよ! これがリアリティじゃ!!」と本気で思っていれば映画は面白くなるんです。

 しかし。しかしなんですが、この「そうはならんやろ」荒唐無稽アクションを大真面目に映像化するという手法もさすがにシリーズが10作目となるとさすがに慣れが生じてきてしまいました。特にインド映画の『RRR』が同じ系統の映画として世界的なヒットを飛ばしてしまうと、『ファイヤーブースト』が相対的に目劣りしてしまうんですよね。観客側が純粋に見てみたいと思っていた荒唐無稽アクションをそのまま映像化できていたのも『SKY MISSION』ぐらいまで。それ以降は無理に「まだ映像化してないアクションはないか!?」と躍起になっている感じがしてしまいます。9作目『ジェットブレイク』では車に乗ったまま宇宙に行きますが、さすがにそれはいくらなんでも…といった感想。

 

最終的な目標を失った敵の存在

 今回の敵はドムに父親を殺され、復習に燃えるダンテ(ジェイソン・モモア)が立ちふさがります。復讐心からドムを可能な限り痛ぶってから殺そうとファミリー全員をつけ狙うわけですが、この「可能な限り痛ぶってからドムを殺す」というのが結構微妙

 というのも今回ダンテは度々ドムたちの前に現れてはドンパチやって退けられて、また別の場所で登場してドンパチやってを繰り返すのですが、結局ダンテの方に最終的に達成したい目標がないので、ドンパチやって一旦退いたところで「またしばらくしたら出てくるんでしょ?」としか思えないんです。ダンテ側に何か達成したい目標、例えば「アメリカの政府要人を暗殺したい」「金塊を盗みたい」のようなものがあればそれを巡ってストーリーを展開できるのでしょうが、「可能な限りドムを痛ぶりたい」だと行き当たりばったりな印象しか受けないのです。「なぜその場所で戦わなくてはならないのか」の理由がない。明確な理由のない戦いにはどうしても感情を乗せづらい。

 ですがこれもある意味で仕方のないことだと思うんですよね。シリーズも10作やってるとさすがに敵のバリエーションも出尽くしています。「世界征服を企む」だと前作のサイファーになっちゃいますし。となると残る敵のバリエーションは「ただただドムのことを恨んでいる」ぐらいしかないんですよ。

 

「実はあいつは生きていた」のやりすぎ

 ただでさえこのシリーズは人が死なない、というか傷すらもつかないのでピンチに陥っても「どうせ平気なんでしょ?」と思ってしまうのですが、さすがに死んだはずのハンを前作で無理やり生き返らせた時は「ちょっと一線超えちゃったな」といった感じで、とかく緊迫感が皆無なんですよね。まぁでもシリーズの宿命ですよね「実はあいつは生きていた」ってやつ。

 他にも「あいつには実は兄弟がいて」というのも散々やっているので、新しいキャラが出てくるたびに「こいつとあいつ、どんな関係だったっけ?」と頭の中で相関図を描くのもとっくに限界を迎えています。となると劇中で何が起きても「どうせ死んでないんでしょ?」と「また新キャラが登場してピンチを救ってくれるんじゃないの?」としか思えないのです。これって割と映画としては致命的なんじゃないかなぁ。

 なんにしてもシリーズが長期化してしまったのが原因でしょう。

 

 本作はシリーズが好きな人であればまるで実家のような安心感でこちらを楽しませてくれます。主演のヴィン・ディーゼルも相変わらずの上下デニムというスギちゃんスタイルというかスプラッターハウスのリックスタイルで暴れまわります。が、そんなヴィンちゃんも御年55歳。さすがに走るシーンは足が動かなくなってきました。そんな彼の体の老いを隠すためか、彼は主演シーンのほとんどは車を運転しております。

 遂に次回第11作目で完結となるそうですが、その完結編では一体どんな荒唐無稽アクションを見せてくれるのか。

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