海外語学留学は語学力向上の役に立たない。
ー巷でよく聞く言葉です。
特にこれから語学力を伸ばしたいと考え、留学を検討している人にとって留学が有用なものなのかどうかは気になるトピックですよね。
僕自身30歳を超えてからフィリピンのセブ島に3ヶ月英語留学に行った経験があるのですが、その経験から言えることがあります。
生徒が100人いたら英語力が向上するのは多くて10人
→90人は英語力が向上しない
という現実です。
これを聞くと「最低でも100万円以上払って留学に行くのに、それだけしか英語力が伸びないのであれば意味がないじゃないか!」と思いますが、それでも僕は
生徒が100人いて英語力が向上するのは多くても10人だとしても、留学は人生経験として行っておいて損はない
と主張します。
今回はなぜ留学で語学力が思うように伸びないのか、それでいてなぜ誰しもが一度は留学に行くべきかについて掘り下げていきたいと思います。
生徒のほとんどが勉強をしない
今回は自分の経験(フィリピン セブ島での語学学校留学)に基づいて語っていきますが、まずをもって語学学校に来た生徒のほとんどが勉強をしません。
フィリピンの一般的な語学学校は朝9時から夕方6時まで授業がありますが、この授業時間を除いて1日3時間以上自主的に勉強する人間は、多くても生徒100人中30人程です。
- 生徒が100人いて
- 真面目に自主学習する人間が30人
- ちゃんと英語力が伸びるのが10人
という割合を考えると、なんとも規則的な配分だなと思います。英語に限らず中長期的な努力が必要なアクティビティにおける割合はどこも似たようなものでしょう。
わざわざ語学学校に来るぐらいのやる気のある人間たちが、なぜこんなにも低い割合でしか勉強ができないのかというと、生徒のほとんどが20代後半から30代前半の、金を持って遊び方を知っている社会人だからです。そんな人間がひとところに集められ、しかも場所がセブ島という観光地なら、まともに勉強できる方がどうかしているのです。しかも来ているメンバーは30歳前後で会社を辞めてしまうような自由人ときている。
語学学校に来る人間は年齢も違えば生まれ育った土地も違う。まして国籍も違う。そういう人間でつるんで遊んでいると、なんかこう「やってる感」が出てしまうのです。特に外国籍の友だちができると低レベルの英語を話しているだけでも「やってる感」が出ます。「英語は所詮コミュニケーションを取るためのツールなんだから、こうやってみんなで遊んでいる方がコミュニケーション能力向上に役立つんじゃね?」と思って変に満足しまうものなのですよね。
学校側も「外国籍の友達を作ろう」と積極的に働きかけるのですが、英語ネイティブ×英語初心者の組み合わせならまだしも、初心者同士が合っているかどうかも分からない英語を使ってもあまり意味がありません。せいぜいお互いでその日に習ったフレーズを使い合って、記憶に定着させることができるぐらいでしょう。
それにシンプルに授業以外で勉強するのはしんどいのです。まず授業自体も全部英語ですし、何かトラブルがあっても基本的には日本語が使えず英語で説明するしかない。周りの環境も日本とは全く違う劣悪な環境ですから、普通に生活しているだけでヘトヘトになってしまうのです。元々勉強習慣がなかった人間が現地で9時6時の授業を受けつつ更に寝るまで勉強するのは非常に難しいでしょう。
真剣度が足りない
語学学校は大学の交換留学と違って勉強をしなくてもペナルティがありません。一応学校としては事前連絡なしで授業を欠席した場合はペナルティがあるとルールで規定していますが、それが実行されているところは見たことがありません。強制力がない環境で一度サボり癖がついてしまうとなかなか勉強ができるものではありません。一度気軽にサボってしまうと次からは常に頭に「サボる」「サボらない」という選択肢がチラついてしまいます。一度選択肢がチラついてしまった状況で「サボらない」を選ぶのはものすごくパワーがいることなのです。
語学学校の生徒は所詮 "お客様" なので、生徒側が英語を使わなくても時間をやり過ごすことが可能です。中には義務教育以降、英語の勉強を一切せずに「とりあえず留学に来てみました」という生徒もいるぐらいですから、一応生徒が何も言わなくても授業が成立するといえば成立してしまうのです。
よく「英語を覚えたいのであれば現地に行くのが一番」と言われますが、なぜ現地に行くのが一番か理解していますでしょうか? もっといえば「現地に行くと、どういうプロセスで英語が覚えられるのか」を言えるでしょうか。
日本でもコンビニや牛丼屋で流暢に日本語を話す外国人を見かけます。言い方は悪いですが、我々日本人が普段コンビニや牛丼屋で見かけるような外国の方は、そこまで学歴があるような感じではないので、そういった姿を見て「多少頭が悪くても現地に行けばその国の言葉を覚えてしまえるんだ」と思ってしまいます。しかし彼らの場合はあくまでも就労ビザで、日本語を正しく使えないと文字通り生きていけないのです。もし日本語を使えず仕事をクビになったらその時点で彼らは不法滞在者となり母国に強制送還となるので語学に対する真剣度が違います。しかし前述の通り、残念ながら語学学校にはそういった「英語を使わないと生きていけない」環境はないのです。(英語が使えないと困りはしますが)
語学学校が役立つほどの基礎学力を身に着けずに来るから
語学学校の講師は当然のことながら日本語が話せないので、授業は基本的にオールイングリッシュです。しかしこのオールイングリッシュの授業に耐えられるほどの英語力を身に着けて留学に来る人間は本当にごく一部です。オールイングリッシュの授業に耐えられる英語力とは、TOEICで言えば最低でも730点。これぐらいの学力でやっとスタートラインに立てるぐらい。本当のことを言えば860点を超えていなければ留学に来てもあまり意味がないのではと思っています。
特にこのオールイングリッシュというのが初心者には鬼門で、初心者だからこそ文法などの基礎的なお話をしてもらわないといけないのに、その文法の説明が英語という地獄。TOEIC860点オーバーの自分でも英語の文法を英語で説明されてもほとんど理解できないでしょう。
TOEIC730点以下で留学に来てしまうと教師の言っていることがほとんど理解できず、授業中もただ頷くのがやっとの状態になってしまいます。英語力を向上させたいのであれば、英語を読み聞きして分からなかった単語は調べて、書いて話してをするときも言葉に詰まる所があればGoogle翻訳に頼ってみたり… と当たり前の勉強法の中にしか英語の上達はないのです。
基礎学力がない状態で留学に来てしまった生徒でも、まともな子は途中からKindleでTARGET1900を買ってひたすら単語をやり始めることが多かったです。最初は「せっかくフィリピンまで来たのに」と机に向かってガリガリやる勉強を忌避するのですが、結局は日本でもできるようなアホらしい勉強法の中にしか上達はないと気づいて、恥ずかしそうな顔をしながら日本でもやれる勉強を始めるんですよね。
僕は「留学に行くのであれば25歳未満ならTOEIC730点、25歳以上であれば860点を取ってからでないと行く意味がない」とかねがね訴えているのですが、それはこれぐらいの学力がないと現地のオールイングリッシュの授業に耐えられないですし、ましてそれぐらいの学習習慣がないと現地でもロクに勉強できないのです。
それでも留学は誰もが一度は行くべきである
ここまでの話を総合すると留学はあまり勧めていないように思われますが、それでも僕は誰もが一度は留学に行ってみるべきだと思います。(たとえ英語の基礎学力がないとしても)
転職の際の武器になる
大手企業では特に30歳を過ぎてから留学する人間を評価しない傾向があります。それは「仕事で嫌なことがあったら簡単に仕事をやめて海外に行ってしまうのではないか」という悪い意味でのフットワークが軽い人間に見られてしまいますし、何よりも「自己意識が高い割に目の前の仕事で成果が出ないから海外留学で一発逆転をしようとしたんじゃないか」と自己評価の高い人間に見られる可能性があります。…実際もし僕が人事をやることになったら、海外留学経験者にはあまり良い印象を持たないと思います。
しかし僕の場合は「なぜこの歳で留学に行ったのか」をキッチリとプレゼンできたので、転職の面接の場では留学経験が非常に有効に作用しました。そもそも留学に行く前からTOEIC875点を取得していたのと、ストーリーとして「元々TOEICのスコアがあったので英語会議に呼ばれることがあり、自己学習をしていましたが、どうしてもスピーキング能力に伸び悩みを感じ、留学に行くことにしました」という内容を語りました。そして現地で受けた定期テストのスコア表も見せ、右肩上がりに成績が伸びているところから現地でもしっかり勉強していたことをアピール。特に「3ヶ月フィリピンの割と劣悪な環境に滞在していたので、英語圏であれば世界のどこでも出張可能です!」と語ったところはウケが良かったです。
日本がいかに恵まれた国か実感できる
日本にいると兎角「日本はもう終わりの国だ」と言われますが、とは言え環境的にはまだまだ豊かなんですよね。
夜道を歩いていても危ない目には遭いませんし、タクシーを利用してもボッタクリに遭うことはまずありません。施設はどこもキレイですし、トイレにはペーパーもウォシュレットもある。政治も腐敗しているわけではないので、努力すれば上に行ける環境です。
フィリピン留学を終え、日本がいかに恵まれた国か実感した今、昔に比べて幸福度は上がった気がします。
世界のどこでも生きていける自信が身につく
フィリピンというそこまで良いわけではない環境で3ヶ月やっていけたので、世界のどこでも生活していける自信がつきました。
英語も当初の目的であるビジネスレベルには到達できませんでしたが、日常会話レベルでは話せるようになったので、イングリッシュスピーカーたちと軽く話すぐらいであれば問題なく意思の疎通を取ることが出来ます。
日本以外でも生きていけるという自信と、英語が話せるという分かりやすいスキルが身についたおかげで、非常に生きやすくなりました。
結局スキルを身につけるためには泥臭い努力をしなければならないと悟った
留学に行った一番の収穫はコレですね。結局何をするにも泥臭い努力が必要なんですよ。海外に行ったからといって努力をショートカットすることは出来ない。
フィリピンに行って朝から晩まで勉強していて、バカらしくなることは本当に多々ありました。自分の場合は「俺はTOEIC875点もあるし、現地に行けば1ヶ月もしないうちに自然と話せるようになるだろう」と楽観的に考えていたものの、本当に帰国するギリギリまで話せるようにならなかったのです。
僕は間違いなく学校でもトップ10に入るぐらい勉強をしていて、周りからも結構陰口を叩かれていたんですよね。友達も作らずずっと机に向かってガリガリやってるわけですから、多国籍なメンバーでワイワイやっている陽キャたちからは「あいつフィリピンまで来て日本でもできるような勉強しててバカだろ」と陰に陽に言われたものです。
でも結局そういう遊んでいたメンバーは軒並み英語力が伸びていませんでしたし、自分は自分で最後には英語力を(それなりに)伸ばすことが出来たので、地道な努力は最後には実を結ぶということを実感したものです。
さて、ここまで留学の残酷な現実と、それでも留学に行くべき理由を語ってきました。
留学は行って損するものではありませんが、行くのであれば損をしないように行ってほしいな、と思います。少なくとも日本で自学自習をしてTOEIC730点以上取得できるのであれば、現地に行っても問題ないでしょう。
もし留学に悩める方がいれば日本での勉強を頑張ったうえで、ぜひ行ってほしいなと思います。
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