テレビ

タイムリープの作劇法 『ブラッシュアップライフ』全話感想

過去記事
blushuplife_thumbnail
ギチギチに詰め込まれた伏線:ドラマ『ブラッシュアップライフ』※3話まで

 現在日テレで毎週日曜22:30~にて放送中のドラマ『ブラッシュアップライフ』を1~3話まで観ました。  本作はお笑い芸人のバカリズムさんが脚本を担当しており、初回放送直後に友人から「ほんと面白いから ...

続きを見る

 ドラマ『ブラッシュアップライフ(BUL)』をリアルタイムで全話観ました。

 テレビドラマをリアルタイムで最終話まで観たのは恐らく小学生以来で、直近で後追いでも全部観たドラマといえば『やまとなでしこ』『プロポーズ大作戦』ぐらいではないでしょうか。僕は映画好きなので「ドラマを観るのに使う時間があれば映画を観たい」ということでドラマはある意味で避けていたものの、BULは遂に全話観てしまいました。毎週日曜の22:30にはテレビの前に待機しながら放映を待つライフスタイルはなかなか楽しかったです。

 前回の1~3話まで観た時点での感想でも書いた通りバカリズムさん脚本による凄まじいギャグの密度と巧みに張り巡らされた伏線にやられてしまい、最終回を迎えた後「ドラマって面白いんだな!」ということで他の作品の何本か追おうとしたのですが、一度BULを体験してしまうと他がかったるくてしょうがない。結局他の作品を追うことはありませんでした。

 BULの最終回が放送されてからそれなりに時間も空いてしまいましたが、リアルタイムで全話観てかなり楽しめたということで、遅まきながら全話観た感想を書いていきたいと思います。

 

○配信での視聴を前提としたドラマ作り

 本作BULはタイムリープものですので、伏線が至るところに張り巡らされています。何気ない会話の中に多くの伏線が詰め込まれてますし、画面を注視していないと分からないものも山ほどあって、「これほんとにドラマとして視聴率取れるんか?」と心配になってしまいました。

 というのもドラマは基本的に主婦層をターゲットにしているので、説明的なセリフを多用することで洗い物や洗濯物の片付けなど、家事をしていても耳で聞いて理解できるようにしなければなりません。ただBULはそれをほとんど放棄した作品作りをしていたのです。

 BULはTVerやHuluでの後追い配信で繰り返し視聴して楽しむことを前提として作られていたフシがあって、その証拠にHuluでもオリジナルエピソード配信しています。プロフィール帳にたまごっち、逆転裁判など画面を注視していないと分からないネタが盛りだくさんに用意されていて、一昔前だったら会議で「企画意図は面白いけど、画面を見続ける必要があるから無理」とハネられそうな内容です。でもこの企画が通るということは配信サービスでの視聴を前提としたドラマ作りが可能になったということで、これがひとつの時代の転換期だと思うんですよね。テレビはあくまでも映像を映すひとつのデバイスとなってしまったとも言えるし、テレビという媒体にこだわらずにドラマ作りができる時代になったとも言えます。

 

○タイムリープものは予算が少なくても済む

 BULは意外なことにキャストが豪華で、メインの三人は置いておくとしても松坂桃李、染谷将太、市川由衣、志田未来、浅野忠信、仲村トオルと主役級が脇を固めます。

 「なんでこんなにも豪華なキャストで脇を固められるのだろう?」と考えたところ、タイムリープものは場面が限定されるので一度セットを作ってしまえばそこで繰り返し撮影ができ、低予算でドラマを作ることができると気づきました。セットに予算がいらない分、キャストにお金をかけることが出来るんですよね。

 また劇中に登場する時代を感じさせるアイテムの数々。前述のプロフィール帳、たまごっち、逆転裁判、それだけでなく楽曲の粉雪、ココロオドル、夏祭りなど。こういったアイテムを登場させるのは権利関係で手間もお金もかかるんですよね。それがタイムリープで場所を限定させてコストを減らした分、アイテムの登場に手間をかけることが出来たのは作品のクオリティアップに大いに貢献したと思います。予算の少ない深夜ドラマなんかだと権利関係で自分の部屋のシーンでもモノが異常に少なかったり「そのメーカー、どこのやねん」と見たこともないアイテムが登場してノイズになったりで、作品に集中できなかったりするんです。

 

○安藤サクラ起用のワケ

 正直僕はこのドラマが後半に差し掛かるまで主役に安藤サクラを起用した理由がよく分かりませんでした。というのも主役の安藤サクラを両サイドから抱える夏帆と木南晴夏のコメディ演技が優れているので、その真ん中にいる安藤サクラはどうしても浮いてしまうんですよね。もちろん安藤サクラは芸達者な人なので下手ということはないのですが、どうしても「そつなくコメディ演技をこなしている」感は拭えませんでした。

 さてこのBULですが前回のレビュー記事では1~3話目までは「ギャグも伏線もギチギチに詰め込まれて最高だ!」と言っていたのですが、4話目以降になると主人公の麻美が色んな職業に就き、タイムリープ要素も薄い「職業あるある話」になってしまって、思っていたのとは違うストーリーラインを進むようになってしまいました。

 しかし後半のあるエピソードで意外な展開になったとき、安藤サクラがものすごく悲しい演技をするのですが、そのシーンを見たときに「あっ、今の日本の女優さんでこれをやれるのは安藤サクラしかいないわ。というよりこのシーンをやりたいから安藤サクラが主演に起用されたのか」と納得しました。内容としてはものすごく悲しいはずなのに、大げさに泣いたりするわけでもなく、アップの表情一つ見せるだけでジーンと来てしまう。このシーンはTwitterでもトレンドに上がるほど評判になっていました。

 それにしても安藤サクラは本当に良い役者さんになりましたね。彼女が最初に世間に認知されたのは映画『愛のむきだし』だと思うのですが、キャリアの初期は彼女が汚い役ばかりやるので当時の映画ファンはかなり困惑していたのを覚えています。あの奥田瑛二と安藤和津の娘なのに汚い役をやっているのはどういうことなのか。業界でポジションを取るために敢えて汚くやっているのか本当に汚いのか。

 『百円の恋』の撮影で、低予算かつ撮影期間も短い中、10日で一気にボクサー体型に仕上げたところから「役者魂はある人なんだな」と世間は認知しましたが、それでも映画ファンの間ではまだどこか「汚い役をやっているから演技力があるように見えてしまうだけではないか?」と半信半疑だった気がするんですよね。でも最近ではNHKの朝ドラに出演した頃からバリキャリ風のキレイな女性になってきた頃からちゃんと演技力がある人だと証明されたので、観ているこっちとしても少し安心した感じです。安藤サクラは恐らく今の日本で一番演技力のある女優さんではないのでしょうか。

★★★★★

最終回を迎えるまではTVerで全話配信されていたのですが、最近ではHuluのみの配信となってしまいました。こちらでは全話配信されていますので、興味がある方はぜひこちらで観てみてください。(Hulu:ブラッシュアップライフ)

-テレビ

© 2023 名古屋とエンジニアリング