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考え方

なぜ成功者はマッチョ思考になってしまうのか

 先日Twitterで非常に興味深いツイートを見かけましたので、シェアします。

 エンジニア転職やブログ開設のキッカケを与えてくれた僕の尊敬するManabuさんが先日このようなことをつぶやかれていました。

 ちょうどそのとき僕は「なぜ成功者はマッチョイズムに傾倒してしまうのか」ということについて考えていたので、Manabuさんのツイートに着想を得て、記事を書きたいと思います。

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 何をやってもダメな人間が自分を変えようと成功者に話を聞くと、往々にして「とにかく頑張って努力しろ!!」「なぜ努力ができないんだ? できない理由を教えてくれ」という根性論で詰められてしまいます。

自分「手取りも新卒からずっと16万円で30歳を迎えて、ここから先大幅に給料が上る見込みもない。俺の人生詰んだ…」

成功者「給料上がる見込みがないなら転職すれば良くない?」

「忙しくて転職活動する暇もないし…」

「暇がないって本当? じゃあとりあえずスマホ見せてよ。どれだけアプリ触ってるか調べるわ。えっ、1日5時間以上も触ってるじゃん。この時間削れば良くない?」

「いや、でもスキルがないから転職できないし…」

「スキルが無いなら今から勉強して資格でも取るか、今流行りのエンジニアにでも未経験で飛び込むしかなくない?」

「仕事で疲れ切って勉強できないし…」

「だって手取り16万円から抜け出したいんでしょ? なら勉強しないにしても何かしら行動するしかなくない?」

「勉強しても資格試験に合格できるかわからないし、エンジニアも今からやれるか分からないし。何より失敗したらどうするんだよ…」

「勉強しなきゃ合格はしないし、やってみないとエンジニアに向いてるかわからなくない? それに失敗って何? 失敗したら現状から何がどう変わるの?」

「そんな事言われても…」

「こっちこそそんな事言われてもだよ。そもそもそっちが給料上げたい現状を変えたいって相談してきたんじゃないの? さっきから言い訳ばっかりで、やれない理由よりやる理由を探しなよ」

「…」

 上記のようなやり取りはみなさんも至るところで見聞きしたり、自身も実際に体験したことがあるのではないでしょうか。このやり取りはかなり単純化したので言い訳ばかりしている方に腹も立ったかと思いますが、いざ自分がこのような状況になると意外と努力を開始できないものです。

 ともかく正論で詰められたところでやる気が出ないものは出ないのが人情でしょう。別に頭の中でロジカルに考えてやる気をセーブしているわけではないので、そこを正論で詰めていっても無駄な作業というものです。仮に「行動しなければ何も始まらないだろう!」と檄を飛ばすマッチョイズムの人間に「じゃあ今から街でナンパしてみて」と言ってみたら、恐らく彼らの大半は動けないだろうし、1秒に10個ぐらいは言い訳を繰り出すはずです。

 

 ではなぜ成功者は往々にしてマッチョ思考になってしまうのか。それは「ひとたび成功すると、何事も普通に努力したほうが早い、と悟るから」なのです。

 僕自身つい数年前までは名前も聞いたことのない弱小メーカーでエンジニアをやっていたのですが、そこで経験を積んで大手に転職したところ「これはコツコツと努力するのが一番効率がいいな」「とにかくやるしかないんだな」と実感するようになったのです。(僕の場合は別に社会的に大成功したわけでもないため、このあたりの話をするのもおこがましいですが)

 名前を聞いただけで事業内容をイメージにしてもらえる大手に行くと、まず周りの反応が違います。

 例えば新たに女の子と出会うにしても、弱小メーカーに勤めていた頃はどれだけ盛り上がっていても終盤で自分の勤務先を告げたところで相手がスマホを取り出すとそのままずっとスマホを触り続けて結局何もなく解散ということが多々ありました。恐らく僕の会社の事業規模などを調べて「(あっ、コイツは将来性ないわ)」とでも思ったのでしょうね。
 ところが名の通った大手に行くと、逆に今までスマホを触りがちだった子も、僕の勤務先を言った途端スマホを触る手がピタリと止まり、以後こちらの話を注意深く聞くようになるということが多いです。

 友人と会ってみても同じくらいの年収レンジならまだしも、役職もあって年収も上だと話が合わなかったりします。まずお店選びをするにもこちらはお金がないので安い店しか選べませんし、注文する内容も自由にメニューを選べません。相手が高いものを選ぶと内心「(割り勘だからお会計、高く付くよなぁ)」と思ってドキドキしてしまいます。
 ところがそれもひとたび結果を出すと態度が変わって色んな話をしてくれるようになります。例えば役職者ゆえの部下のマネジメントの苦労であったり会社でのパワーゲーム、仕事と家庭の両立の難しさ、など。こうやって話をしてくれるようになると今まで色々と気を遣わせていたんだなと理解できます。役職も就いていて部下も何人かいる友人からしたら、そりゃ同じような歳で平社員やってて、大した努力もせず「給料が安い」とだけ不満を垂れてる人間に話せることなんてあまりないですよね。

 親の態度も劇的に変化して、今まで僕が実家に帰っても平然としていたのが、今ではいつでもニコニコ「最近仕事はどうなんだ」と聞いてきます。僕はFラン私立文系大学からメーカー事務職に就職し、そこからエンジニアになったのですが、その時は仕事の話などほとんど聞かれませんでしたが、今では隙あらば仕事の話を聞いてこようとします。
 肉体労働で大変苦労をした父親の意向もあって、僕は親からかなりの教育資金を注ぎ込まれたのですが、高校時代は100時間も勉強せずに見事Fラン大学に入学。その後も新卒では年収300万円にも満たないブラック企業に入社することになったものの、父親からはほとんど苦言を呈されたことがありませんでした。一度だけ酔った勢いで「あれだけ金かけてやったのにあんな大学入りやがって」と言われたことがありました。まぁごもっともだと思います。僕が父親の立場なら彼の数千倍は嫌味を言っていたでしょう。そうじゃないとかけた教育資金の元が取れないですから。

 一度成果が出ると周りから褒められ、自己肯定感が劇的に向上します。それと同時に今まで結果を出さないことがどれだけ自分の自己肯定感を下げていたのかを実感できます。

 

 近年、漫画でも小説でも異世界転生モノが人気です。現在のコミュニティで冷遇されたていた主人公が、ふとしたキッカケから別のコミュニティに加入することになり、そこでメキメキと頭角をあらわすと。また昨今の自己啓発書でも「自分が所属しているコミュニティや上司・同僚と合わないと感じたら即座に縁を切ってもいい」と優しく語りかけてくれるものが多いです。

 しかし僕はこれに対して懐疑的であって、自分にスキルや実績がない状態で別のコミュニティに移動しても、それは環境ガチャにしかならないんですよね。異世界転生モノもスキルのある主人公が、自分のスキルを正当に評価してくれるコミュニティに移ったからこそ成立するのであって、何も持たない主人公が別のコミュニティに移ったところで扱いは変わらないはずです。仮にまるで宝くじにあたったかのような確率で、たまたま周りがいい人間で固まっていて自分が丁重に扱われたとしても、いつそのコミュニティのバランスが崩れるかに怯えなくてはなりません。

 

 一度結果を出してしまうと、その過程というのは驚くほど過小評価してしまうものです。いわば自転車の乗り方のようなもので、一度乗れるようになってしまうと初心者からアドバイスを求められても「とにかくハンドルをしっかり持って、早めにペダルを漕げ」ぐらいしか言えないでしょう。でも初心者からするともっとテクニカルなことを教えてもらいたいはずです。

 努力ができるようになる方法の言語化が難しい以上に、アラサー以降で努力ができるようになったという人間の絶対数が少ないというのも問題です。努力ができるようになるならないは、まず遺伝という先天的な要因と、いかに幼少期に成功体験を積めるかという後天的な要因がありますが、ひっくるめると両方とも生まれた家庭によって大方が決まってしまうのです。

 それこそ前述のナンパも同じですが、街で道行く女性に声をかけるということはほとんどメリットしかない行為であるものの、過去に女性から拒絶された経験が山ほどある人間は何を言われたって足が動かないと思います。片やイケメンに生まれモテ続けた人間は「俺が声をかければオンナは喜ぶ」ぐらいのマインドでいて、ガンガン女性に声をかけれます。そして試行回数が多いからこそ声のかけ方も上達していって、格差は開く一方。アラサーになってから一念発起してナンパにトライしたところで、イケメンが過去の成功体験からガンガン成果出している傍ら、自分は箸にも棒にもかからなければ、成果が出るまで続けるのは至難の業でしょう。

 僕もこのブログで「1日1時間勉強を3年続けたら年収が150万円上がりました」という記事を書いていますが、アラサーを迎えてからコツコツ勉強するって、傍から見ていて全然面白くないんですよ。やっぱり仕事が終わってから勉強できる時間って1日1時間ぐらいが限界で、年間300時間やれたら御の字です。300時間は20営業日で2ヶ月働いたぐらいの数字ですからね。わずか300時間で今までの負け分を取り返すぐらいの大逆転は非常に難しい。僕もあまりの自分の成長の遅さにクリスマスにブログで「もう何もかもが嫌になった」って書いているぐらいですから。

 だからネット上の安易なサクセスストーリーに飛びついてしまい、そこに再現性がないから失敗してしまう。失敗してしまうと自分が無能だと証明されてしまったかのような気分になってしまうので、次から新しいことに挑戦するのをためらってしまう。負のスパイラルです。

 

 話は大幅にそれてしまいましたが、成功者はマッチョイズムで相談者を滅多切りにしたいと思ってやっているわけではなく、結局そうするしか他に道がないということを知ってしまっているからこそ厳しい口調になってしまうのです。

 こういった背景を知っていれば、成功者にマッチョイズムを説かれても、多少は心に余裕が持てるかと思います。



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