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考え方

今の日本で一番必要なスキーム

 先日ネット上でこれほどにまで「良い取り組みだな」とは思わずにはいられないニュースを目にしました。

 それは"4630万持ち逃げ男"こと田口翔さんがYouTuberのヒカルさんに保釈金を肩代わりしてもらい、当面の間はヒカルさんが出資するブロッコリーと鶏胸肉を販売する会社で社員として働くとのことです。

 

 本件について詳しく知らない方に向けてこのニュースを簡単に解説いたしますと、ことの発端は山口県阿武町が町民何百世帯かに分配して振り込むはずだったコロナウィルス対策給付金4630万円を誤って田口翔さん一人に誤って送金。町としては返還を要求するも、田口さんはオンラインカジノで全額浪費。返還が困難になったことから電子計算機使用詐欺罪で逮捕されます。そこから田口さんの担当弁護士がYouTuberたちと面識あったため、弁護士を通じてYouTuberのヒカルさんに保釈金の支払いをお願いすると、快諾。釈放後はヒカルさんが田口さんの身柄を引き取り、当面はヒカルさんが出資するブロッコリーと鶏胸肉を販売する会社・QBTで広報として働くことになりました。

 詳しい事の経緯は上に張ってあるYouTube動画を観ていただければ分かるのですが、保釈後はQBTの広報としてTwitterのアカウントを開設すると瞬く間にフォロワー10万人を獲得します。そして現在はQBTの戦力となるべく会社の研修を受講中であり、日報代わりに毎日研修で学んだことをTwitterで発信しています。

 さて、動画を観ていただければ分かる通り、田口さんはマスメディアが報道していたような極悪人のイメージからはかけ離れており、事の顛末を話す素振りを見ていると少なくとも悪い印象を持つ人はいないでしょう。僕の場合はむしろ好感すら持ちました。そして彼の話を聞いていると「もし自分が彼の立場だったら恐らく同じようにお金を持ち逃げしていただろうな」とは思わずにいられないのです。

 中学卒業後は働きながら通信高校に通いなんとか卒業するものの、その後は工場やホームセンターのレジ打ちの仕事を転々とします。誇れるようなスキルもなければ、スキルを身につける方法もわからない。預金残高も665円しかなく、将来に希望は何一つ持てない。そんな中で振り込まれた4630万円。町からは返還を要求されるが、これを素直に返したところで一体何になるのか。もしこのお金で一発当てられれば人生を変えられるかもしれないのに…。このような状況でお金を返還できる人間はなかなかいないでしょう。

 そこへ来ての今回のスキームなのですが、今回は三方良しどころか四方良しの画期的スキームだなと。

 田口さんは社会人として必要なスキルを手に入れることができるし、10万人というフォロワーに定期的にスキル習得の監視をしてもらえる。
 QBTは会社の事業内容に加えて、手厚く研修を行う優良企業として世間にアピールできる。
 ヒカルさんは保釈金300万円を払うことになりましたが自分が投資した会社をアピールするよい機会になり、売上が上がればその分リターンが増える。300万円で今回は間接的にTwitter10万フォロワーを買えたようなものですから、この時点で宣伝広告費としては十分回収できているでしょう。
 フォロワーは社会人として必要なスキルを身につけるためにはどのようなカリキュラムを組み、そしてどれくらい時間がかかるかが理解できる。

 もちろん4630万円持ち逃げした田口さんの罪というのは消えるわけではありませんが、それにしても近年ここまで社会的な意義のあるスキームもなかなかありません。

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 昨今インターネットでは様々なサクセスストーリーやライフハックメソッドが共有されるようになりましたが、過去に比べて成功者が劇的に増えたかというとかなり疑問です。メソッドが共有されたところでそもそも99%の人間は机に向かうこと(=実際に行動すること)自体ができないのです。つまりは勝てる人が更に勝つだけになってしまいました。成功するためにはコツコツとやることが必要ですが、近年サクセスストーリーばかりに目が行って、そういった基本的なところがあまりにも蔑ろにされています。

 またこちらも先日ニュースになったお話ですが、日本は生産年齢人口に対する就業者数が9割に達しているそうです。

 ずいぶんと前から言われていることですが、この日本では労働力不足が確実となっており、そこではボトムアップのための施策が重要となります。

 例えば1人の人間が今まで1しかできなかった仕事を10できるようにするよりかは、100人の人間が1から2できるようにするほうが、トータルの生産量は上になります。もっと言うとスキルアップは複利で効いてくるので、ひとたび1→2にできた人間はその後4にも5にもできるのです。

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 動画の中でヒカルさんが田口さんに手を差し伸べることについて照れ隠し的に以下のようなコメントをしています。

「ガッポリ稼がせてもらおうかなと思っています。人を救いたいとか綺麗事じゃないんで。そんな気持ちだけで動かないんで僕は。YouTuberとしてこれいけるなと踏んだんで勝負に来てます!」

 これ、本当にいい言葉だなと。

 特にこういった援助の要素が絡んでくるものは、善意でやっちゃダメなんですよ。善意はいつか尽きてしまうので。
 世の中なんでもビジネス的に持続可能な形にしないとトータルで救える人間が減ってしまうのです。

 特に今回のようなスキルを獲得するというプログラムとなると、習得者は必ずしもモチベーションを一定に保ち続けることができません。一度なくなったモチベーションが復活するのは1週間後か1ヶ月後かもしれません。その時に周りの支援者が100%の善意でやっていると習得者はモチベーションを下げていることに罪悪感を感じてしまい、それが続くようであればそもそも罪悪感を感じなくても済むようにその場から逃げてしまうということが発生しかねません。

 ビジネスとして一人の男を立派な社会人に育て上げるこのスキーム、非常に期待しています。



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